漂流するJVCケンウッド、止まらない縮小均衡
10月3日、午後2時過ぎ。横浜みなとみらいの一角は、異様な熱気に包まれていた。
ケンウッドが日本ビクター(JVC)に200億円を出資し、経営統合してから丸3年──。持ち株会社から移行して、ようやく今年10月1日に完全統合した新会社「JVCケンウッド」が誕生した。みなとみらいでは社員向けの経営方針説明会が行われ、国内社員のみならず、海外子会社の幹部も参集。平日にもかかわらず総勢4500人が一堂に会し、会場は祝福ムードに包まれた。
この日、会長の河原春郎は上機嫌だった。冒頭20分を費やし、完全統合に至るまでの熱い思いを語った。そして最後に一言、「We are the ケンウッド!」と、力強く社員に呼びかけて話を終えた。
ある社員は、「ステージから離れた席だったので、『JVC』を聞き逃したかと自分の耳を一瞬疑った」と苦笑する。だが、河原に続いて事業方針を説明した役員も「We are the ケンウッド!」と締めくくったため、会場に失笑が漏れた。それはまるで、同社における旧ビクターの存在感を象徴するようだった。
統合から3年で売上高は半減
ここで時計の針を3年前に戻そう。当時、業績悪化にあえぐビクターは、身売り話が浮かんでは消えていた。投資ファンドへの株売却も検討されたが、親会社のパナソニック(当時は松下電器産業)はためらっていた。紆余曲折の末、ケンウッドが200億円の第三者割当増資を引き受けることで交渉はまとまった。
「小が大をのみ込む」と騒がれたビクターとの統合は、当時ケンウッド社長だった河原の決断。東芝から投資ファンドのリップルウッドに移り、米国仕込みの経営術を身に付けた手腕は高く評価されていた。
2002年には、経営再建中だったケンウッドの社長に就任。社員3分の1をリストラし、黒字事業だった携帯電話からの撤退を決断するなど“外科医”としての能力を発揮。債務超過をわずか1年で解消し、ケンウッドを黒字回復へと導いた。