漂流するJVCケンウッド、止まらない縮小均衡

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だが、その後は成長戦略を描き切れずにいた。その矢先に舞い込んできたビクターの出資話は魅力的だった。市場シェアが上がれば存在感が増し、製造コストも抑制できる。

特に、相乗効果を期待したのがカーエレクトロニクス事業だ。音と無線の技術に強みを持つケンウッドと、映像技術の特許を多数有するビクターが一緒になれば、成長可能性が高まるとそろばんをはじいた。その読みどおり、統合後のカーエレ事業は稼ぎ頭に育っている。欧米ではトップシェアを獲得し、日本でも存在感を増しつつある。

壮絶なリストラでライバル企業へ転職も

しかし、やりきれない思いを抱えているビクター出身社員は少なくない。「河原さんは統合前の社員説明会で、売上高1兆円企業にしたいと語っていたのだが……」とため息をつく。08年の統合時、2社の売上高を単純合算すると8237億円。だが直近の11年3月期は、3526億円まで激減している(図上)。河原は「円高とテレビ事業撤退の影響」と説明するが、もちろんそれだけではない。

ケンウッドと一緒になったビクターを待ち受けていたのは、熾烈な構造改革だった。すでに統合前に2割の社員をリストラしていたが、河原は得意の“外科手術”に辣腕を振るった。国内人員の3分の1を削減し、海外子会社の売却・清算も進めた(中表)。


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