くら寿司、「シャリカレー」に託す2つの戦略 酢飯+カレーが生み出す化学反応とは?

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2012年に「7種の魚介醤油らーめん」を投入するなど、サイドメニューを拡充してきたくらコーポは目下、業績絶好調。過去最高の純利益を連続で更新している。

ただ、「消費者のニーズに応えられない回転すしチェーンは、いずれ衰退していく」と、田中社長の危機意識は強い。そこで、重点商品として今回投入したのが、シャリカレーである。

1つ目の狙いは客層の拡大

くら寿司がシャリカレーに込めた戦略的な狙いは大きく2つある。

1つは、来店客層の拡大だ。ラーメンだけでなく、コーヒーやデザート類といったサイドメニューを増やしてきた効果で、くら寿司の既存店の客単価はこの6月まで31カ月連続で前年同月を上回っている。

ところが、客数に関しては、6月が前年比93.5%となるなど、前年割れとなる月が少なくない。もちろん営業日数や天候、イベントの有無などの影響で客数は増減しがちなのだが、安定的に客数を伸ばしていくことが、くら寿司の課題の1つであることは確かだろう。

現在の来店客の中心は30~40歳代のファミリー層。幅広い層に人気があるカレーライスならば、中高生や20代のサラリーマンなど、比較的弱かった層を誘因することが可能になる。このような新しい層を呼び込むことができれば、夕方以降に比べて低かったランチタイムの店舗稼働率向上につながるかもしれない。

もう1つの戦略的な狙いが、原価率の改善効果である。鮮度が求められる魚介類を扱う業態だけに、回転すしチェーンの原価率は40%台と、外食業界の平均(約30%)に比べて高いといわれる。加えて、昨今の円安が、仕入れ額の約7割を輸入水産物に頼るくら寿司には打撃となっている。

その点、魚介類ほどの鮮度を要求されない食材を使用するカレーライスであれば、すし類に比べて原価率が低くなる。食材の調達先も国内が多く、円安の影響を受けにくい。また、「シャリカレーは販売価格350円と高めの設定なので、収益貢献が大きい」(外食ジャーナリスト)と、さらなる客単価上昇につながるとの見方もある。

戦略商品という位置づけのシャリカレーだが、この開発は容易ではなかったようだ。会社側は「開発期間は2年」としているが、田中社長は「実は10年前に仕込んだ案件だった」と打ち明ける。

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