「意識高い系日本人」の話がつまらない理由

共感を呼ぶストーリーに必要な要素とは?

MOTHが行っているスピーチイベント

マンハッタンのおしゃれなお店が集まるソーホー地区の一角にある古本屋。営業時間を過ぎた夜7時過ぎ、次々と人が吸い込まれていく。中に入ると、店の奥に小さなステージが設けられ、その周りにおかれた100席ほどの椅子はすべて埋まり、座り切れなかった人で、店内はまさにすし詰め状態だ。熱気あふれるその様子はまるでライブハウス。そこでどんな演奏が始まるかと思えば…。

「私は80歳まで、杖ひとつ使わず、とにかく自分の脚でどこでも歩き回ったものです。それが、ある日、突然入院することになりました・・・」

ステージの上に現れたのは、ロックミュージシャンでもシンガーでもなく、車いすの高齢の女性。彼女は病気で一人では歩けなくなったこと、そこでいかに近所の人が手を差し伸べくれたかを情景描写たっぷりに語った。これは非営利団体MOTHの主催するストリーテリングイベントの一幕で、MOTHはこうしたごく普通の人々が、ごく普通の自分のストーリーを舞台上で語るイベントを全米中で実施している。

いわば一般の人が行うTED

入場料は8ドル~と有料だが、話をしたい人、聞きたい人が集まって、どの会場も常に満杯だ。MOTHは前回紹介したStory Corp同様、市井の人々のストーリーに価値を見出し、共有する活動を展開している。ストーリーを録音して記録に残そうとするStory Corpとは違い、多くの人が一堂に会し、場とストーリーを同時に共有するという仕組みだ。ストーリーテリングのイベントとしては、知識人や学者など、功績のある人々がステージ上で、その経験談などを披露するTEDが最近は有名だが、MOTHはその辺にいる一般の人々が主役。

MOTHとは英語では「蛾」と言う意味だが、MOTHを立ち上げた小説家ジョージ・グリーンさんが昔、汗ばむような夏の夜に、近所の家の玄関の階段で友達と集まり、語り合った時に、外灯に群がる蛾をみて、話に群がる自分たちを「蛾」のようだと形容したことから名づけられた。

そもそもはグリーンさんが自分の居間に人を集めて、始まったこのストーリーテリングのムーブメントは大きく広がり、イベントだけではなく、そのコンテンツはラジオ番組やpodcastとして放送され、全米中で人気を集めるようになっている。

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