「意識高い系日本人」の話がつまらない理由

共感を呼ぶストーリーに必要な要素とは?

MOTHはこうした活動のほかに、ストーリーテリングを様々な人や団体に教えるワークショップも開催している。例えば、刑務所の収監者に対するワークショップ。罪を犯した人々に対し、ストーリーテリングのスキルを伝授する。これまでコミュニケーションが不得意だった人が、ストーリーテリングによって自分の気持ちや経験を伝える術を知り、心を開くばかりではなく、社会との対話の仕方を学ぶ。

「誰からも話を聞いてもらえないし、自分の人生に価値はない」と考えてきたような犯罪者にとって、自分のストーリーに誰もが一生懸命、耳を傾けてくれるという感覚は新鮮で、価値あるものに違いない。家族や知人を招いてのストーリーテリングのイベントも大盛況で、話したいという希望者が殺到するという。

ワークショップで講師を務めるドーン・フレーザーさんによれば、「ストーリーテリングのスキルは刑務所を出た後の仕事探しにも大いに効果を発揮する」そうで、犯罪者の更生といった社会問題の解決にもその力は生かされるというわけだ。

ストーリーは最強のエンパワーメントツール

ドーンさんはストーリーテリングのスキルを教えるために世界中を飛び回っている。つい先日はアフリカのNGOの女性リーダーたちとのワークショップのためにウガンダまで行ってきた。ビル・ゲーツ氏の立ち上げた財団の助成で実現したこのワークショップには、ストーリーテリングこそが、女性や貧困に苦しむ人、声なき弱い立場の人間の究極のエンパワーメントツールであるという考え方が根底にある。

「アフリカではたくさんの人が飢えている」というよりも、例えば、8歳の少女、アヤナさんの苦境や困難を乗り越えようとする姿を生々しい言葉でつづったストーリーの方が、人々の心には刺さりやすいだろう。

アメリカではストーリーテリング力=説得力であると実感する場面が多々ある。例えば、ニューヨークのホームレスは、よく地下鉄に乗り込んできて、「お金を恵んでほしい」と乗客に訴えてくるのだが、そのストーリーテリング力によって、獲得できるお金が全く違うのだ。最もダメなケースは「お金を恵んでください」とだけ訴える人。逆に、最も成功していたのは、自分の苦境をストーリーにして、語り掛けていたホームレスだった。

「私は昔、軍人でした。イラクにも派遣されました。戦闘にも参加し、そこで同僚を亡くしました。退役し、アメリカに戻りましたが、突然の病に見舞われました。難病で、3回も手術をすることになりました。(中略)働きたくても働けず、大変心苦しいが、恵んでもらえないだろうか」と切々と訴えかけた。すると、座っていた乗客が次々にドル札を差し出していくではないか。ものの3分の話で、あっという間に20ドルほどが集まっていた。

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