「神様」による早すぎる台湾総統選の大予測(前編) 2028年こそ野党統一候補で民進党現職に挑戦か

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野党連合のカギを握るのは民衆党になるだろう。1月の選挙は柯文哲氏が予想より善戦した。これは野党連合交渉の劇場政治を経て、柯氏が国民党とたもとを分かったことから民進党でも国民党でもない若者の支持を大挙得ることができたからだ。

だが、民衆党は選挙後の国会闘争で国民党との共闘を選択し、与党・民進党と激しく対決する道を選んだ。この結果、民衆党は国民党と連合する、あるいは国民党を助ける小党というイメージになった。民衆党は国会の与野党対立をプレイアップしすぎたため、第3勢力が埋没するという戦略的失敗を犯している。

仮に民衆党がもっとずる賢く国民党と民進党を対立させてデッドロックになったところでキャスティングボートを巧妙に使っていれば、あるいは国民党と組むのであればもっと時間をかけて法案の意義を説明していれば支持が拡大する可能性はあった。

民衆党はせっかちで戦闘的な黄国昌氏に引っ張られてチャンスを自らつぶしたのではないか。黄国昌氏はかつての小沢一郎氏に似ている。ものすごく有能で推進力も強いが、行く先々で摩擦も引き起こす。柯主席は今後軌道修正を試みるであろうが、一度ついたイメージを変えるのは簡単ではない。民衆党の当事者はこういう位置づけに強く反発するだろうが、どの世論調査を見ても選挙後に民衆党の支持は伸びていない。

2028年は予測が困難でかつてない緊張の激戦か

民衆党の支持が伸びないと仮定すると、柯主席としては手持ちのカードを増やして国民党と交渉をし、党の将来を確保することが重要になる。昨年はそうした発想で柯氏が一旦は野党連合を受け入れたが、党内から反発の声があがり反故にされた。だが次の選挙では民進党政権を倒すという大義名分が通りやすくなる。

柯氏は年齢的に次がラストチャンスだ。何をレガシーにするかの判断が必要になる。すると自分が創った民衆党を存続させることにこだわらざるを得ない。副総統といくつかの閣僚ポストを獲得できれば、若手中堅にポストを回し人材育成ができる。そしていくつかの選挙区で国民党を譲歩させれば戦いの場ができる。

きれいごとを言っていても始まらない。党が消えては元も子もないのだ。国民党にとっても、次はどうしても勝ちたいので両党間で取引が成立するチャンスがある。

これは台湾の民主主義体制の中での権力争いだ。野党が政権を取るため連合するのは海外でも珍しくない。しかし、台湾の場合は非常に複雑なことになる。中国は統一を妨げる最大の敵である民進党を何としても下野させたい。いろいろな手を使って野党連合を後押しするだろう。国民党も民衆党も現状維持を掲げて共産党主導の統一に反対しているが、民進党政権を下野させることでは中国の思惑と一致する。

2024年選挙は民進党の勝利が早い段階から予測可能であったが2028年はそうはいかない。米中の駆け引きがからんで2024年より緊張感が増す選挙になる。2028年総統選挙がこのような方向になるとしたら、その手前の2026年統一地方選挙はどう動く可能性があるだろうか?後編で地方選挙の見通しと柯文哲氏の役割にフォーカスしたい。

小笠原 欣幸 台湾政治研究者、東京外国語大学名誉教授

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おがさわら よしゆき / Yoshiyuki Ogasawara

1981年一橋大学社会学部卒業。1986年、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了(社会学博士)。東京外国語大学外国語学部専任講師、同大大学院総合国際学研究院教授などを経て、2023年退官。同大名誉教授。英国・シェフィールド大学、台湾・国立政治大学で客員研究員を務めた。主著に『台湾総統選挙』(晃洋書房、2019年)

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