沖縄で米兵の犯罪がかくも続く根本的な理由 沖縄県に連絡しなかった以外の深い問題(前編)

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沖縄で米兵による犯罪が相次ぎ、沖縄県に情報共有されない事態まで起きた。なぜ米兵の犯罪がなくならないか、その構造を前後編で完全解説する(前編)

在沖基地に抗議する市民とその前を通る米軍関係者
沖縄で米兵による犯罪が相次ぎ、そのたびに市民から怒りの声が上がる。写真は2016年(写真:Adam Dean/The New York Times)

昨年から今年にかけ、沖縄県内で起きた5件の米兵による性的暴行事件で、いずれも米兵検挙などの情報が沖縄県に共有されなかったことが問題になっている。しかし、これまで論じられていない、より大きな問題は、昨年12月の事件などの加害者が米軍の主な管理対象となっている、事件・事故を起こしやすいとされてきた米兵ではないことだ。

本稿では、米軍がどのような事件・事故対策をとっているのか、どのような米兵が事件・事故を起こすのか、なぜ事件・事故は減らないのかを前後編で解説する。加えて、米軍関係者と地元住民が雑居する住居環境によって、「セオリー」から外れた犯罪が起きやすい現状を指摘する。

県議選優先でないがしろにされた被害者の権利

1997年の日米合同委員会では、在日米軍による事件・事故の情報を外務省や沖縄防衛局がアメリカ側から連絡を受けて県に伝えると定められた。だが、昨年12月の米兵による性的暴行事件を沖縄県が知ったのは、当該米兵の起訴から約3カ月後の6月25日の報道によってだった。政府が県に事件内容を伝えたのは、同日に県から問い合わせを受けてからだ。

沖縄県警は2023年以降、米兵による性的暴行事件について、逮捕や起訴後も被害者のプライバシーに配慮して公表しなくなっている。だが、外務省は昨年12月の事件について、米軍関係者の事件・事故に現場で対応する防衛省・沖縄防衛局にも伝えていなかった。

日米地位協定にもとづく、公務外の米兵の犯罪における被害者への補償制度の中には、補償金確定前の治療費の融資や前払いなどの仕組みもある。防衛省サイドに情報が共有されなかったことで、被害者が補償について沖縄防衛局から説明されず、検討の余地も与えられなかったことは大きな問題だ。

外務省はなぜ、被害者の補償を受ける権利をないがしろにするようなことをしたのか。6月16日に投開票された、沖縄県議選への影響を恐れてだといわれている。実際そうだろう。翁長雄志・玉城デニー県政を支えてきたオール沖縄は、「風が吹く(=沖縄戦の歴史認識や米軍・自衛隊をめぐる問題が起こる)」と選挙に勝利してきた。

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