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世界に学ぶ日本に必要な住民主体の自衛のすすめ 「非武装中立」神話を脱却した現実的方法(前編)

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有事を想定した国民保護体制には数多くの問題がある中、求められる解決策は何か。琉球大学の山本章子准教授が「非武装中立」神話から脱却した方策を提言する(前編)

外部からの武力攻撃が起きた際に国民保護体制は本当に機能するか問題も多い(写真:Lauren Decicca/The New York Times)

もはやどれほどの人がピンとくるのか分からないが、戦後日本には「非武装中立」という思想が存在した。2度の分裂を経た社会党が、1960年の日米安保条約改定以降に安全保障・外交政策として打ち出した。日本の再軍備と日米安保条約への反対を表すこの思想は、1994年に社会党が自民党および新党さきがけとの連立政権に参加するにあたって放棄された。

「非武装」と「中立」が合わさった言葉が人口に膾炙したことは、一定の日本人にこの2つが不可分の関係にあるという誤解を与えたのではないだろうか。

「『非武装』で『中立』は守れない」が世界の常識

歴史を見るかぎり、「中立」が「非武装」によって実現したことはない。スウェーデンは1834年以来、200年近く「中立」「非同盟」を掲げてきた国だが、徴兵制があり(2010〜16年の廃止をへて復活)、冷戦期には対GDP比3〜4%の軍事費をおおむね保ってきた。ロシアのウクライナ侵攻を機に2022年、同じく中立主義をとってきたフィンランドとともに北大西洋条約機構(NATO)加盟を申請して注目されたが、実際にはNATO発足直後から、スウェーデン軍とNATOの秘密裏の協力態勢が構築されてきた。

自衛をのぞいて他国と戦争しない、同盟も結ばない「永世中立」を掲げるスイスやオーストリアも徴兵制をとっており、1815年以来この政策を保持してきたスイスは、有事に動員できる「民兵」として人口の約1.7%にあたる約14万4000人を保持する。日本の自衛隊の定員は約24万人だが、人口の約0.2%にすぎない。

「非武装」にこだわるがゆえに、自国が侵略の意図を持たなければ他国から侵略されない、もし占領されても抵抗しなければ殺されない、と主張する人々がいるが、歴史に対する無知だといわざるをえない。こうした主張は、日本が一方的に侵略された経験のほぼない国だということも関係している。

ロシアや中国が膨張主義的な行動をとるのは、大国から何度も一方的に侵略され、占領下で国民を虐殺された歴史が、過度に防衛的な安全保障認識につながっているからだと専門家は指摘してきた。アメリカは第2次世界大戦後、世界中に軍隊を駐留させるようになったが、それも太平洋戦争で日本からハワイを奇襲され、グアムを占領されたことへの教訓から防衛ラインを拡大したためだ。

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