沖縄で米兵の犯罪がかくも続く根本的な理由 沖縄県に連絡しなかった以外の深い問題(前編)

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無風となった今回の県議選では、沖縄で党勢を拡大したい立憲民主党が積極的に候補者を立てた。立憲民主党に多数の党員をとられた恨みから、社会民主党(社民党)が各選挙区で立憲民主党への刺客を立てた結果、乱立したオール沖縄候補が共倒れ。選挙前に保革伯仲だった県議会は、自公維新などの保守系が安定多数の議席を獲得した。

在沖米軍幹部による米兵事件・事故の背景

しかし、外務省の情報秘匿ばかりが問題にされ、昨年12月の事件の深刻さがまともに論じられていないことの方がより大きな問題だ。それは、事件が米兵犯罪の「セオリー」から外れていることだ。米軍は「セオリー」にしたがって関係者の事件・事故防止策をとっており、その網の目から外れた人間が犯罪を起こす場合には防ぎようがない。

沖縄県には在日米軍専用施設の70.3%が集中している。必然的に在日米軍の事件・事故も沖縄に集中する。2023年の沖縄県内における米兵と米軍属、その家族の刑法犯検挙件数は前年比18件(14人)増の72件(60人)で、過去20年間で最多だった。

内訳は、まず前年0件だった殺人、強盗、放火、強姦などの凶悪犯が2件(2人)に増えた。窃盗犯は17件(10人)増えて、31件(27人)、器物損壊などその他の刑法犯は18件(9人)増えて33件(25人)となった。

こういう話をすると「米軍関係者より沖縄県民の犯罪の方が多い」と言う人がいるが、米軍関係者の「公務中の犯罪」と「『専ら(もっぱら)犯』といわれる米軍人や米軍関係者同士の犯罪」の場合には、日本に一次裁判権がないため日本の警察は検挙しない(被疑者を特定しないまま検察に事件を送致)。したがって、一部にすぎない公務外の犯罪の検挙件数だけで日米比較しても意味がない。

それはさておき本稿の目的は、米軍関係者が犯罪を起こす構造的要因を説明することにある。筆者が在沖米軍の政務外交部長に聞き取りしたところによると、米兵が事件・事故を起こす背景として、日米の法律の違いと若い男性の集団という特性があるという。加えて、沖縄で米兵犯罪が多い理由として、空軍・海兵隊ともに約半年間のローテーション配備で来る米兵が多いことも挙げられる。

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