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「買収のキーマン」伊藤忠エネクス吉田社長が激白 再生にメドがついた2~3年後に猛攻撃が始まる

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すべてはインスピレーションから始まった――。ビッグモーター買収の過程と狙いをキーマンが明かした。

伊藤忠エネクス吉田朋史社長
インスピレーションで再生に手を挙げたと話す伊藤忠エネクスの吉田朋史社長(撮影:風間仁一郎)

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伊藤忠商事と伊藤忠エネクス、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)の3社連合が目指すのはビッグモーターの再生だ。ただビッグモーターの買収については、伊藤忠商事の社内から躊躇する声も上がっていた。それを物ともせず推し進めたのが、伊藤忠エネクスの吉田朋史社長だった。
伊藤忠時代は住生活部門を率い、副社長まで上り詰めた吉田氏。なぜ、あえて火中の栗を拾いに行ったのか。1時間半にわたって聞いた。

――伊藤忠商事の社内では買収に慎重な声もあったと聞きます。葛藤はなかったのですか。

葛藤は何一つなかった。ビッグモーターは2023年の7月頃から問題が公然と表に出始めてガラガラっと崩れていった。これはきっと「ディストレス」と言われる経営困難な状況に直面する、誰かがスポンサーになって再建しなきゃならないだろうと想像がついた。

すごい利益を出していた会社が何かのきっかけでガラガラと崩れて、お客さんが1割しか来なくなっちゃう苦境に陥った。それを見て、まずは適当に「行くぞ」と決めた。インスピレーションだった。

そこから青山さん(港区北青山にある伊藤忠商事東京本社)に声をかけた。最初に岡藤正広(伊藤忠商事)会長のところに行ったとき、ハナからノーとは言われなかった。「まずはやってみろ」と。

途中でものすごい数のチェックポイントがあったが、そこを乗り越えた。会長も「イエス、イエス」と言い続けて最後まで行った。

今までにやったことがないケース

――伊藤忠らしい判断だったようにも思います。

車業界のヒエラルキーからすると新車や高級中古車を売るところは手を出さないだろう。また、レピュテーションリスクを気にして大手商社が買いにくいのも事実だ。その中で手を挙げたのは、確かに伊藤忠らしいのかもしれない。

伏魔殿のような会社の株式を買うとすべてのライアビリティ(義務責任)が株主に来てしまう。普段ならそういう会社は絶対に株式の取得では買わない。

だがビッグモーターに関しては、いくつかの問題があってアセットで買うとかえって高くつくとわかった。そこですべてのエクスポージャーリスクを調べ切ったうえで株式取得によって買おうとなった。

伊藤忠でも今までやったことがないケースだと思う。膨大な作業をやり切ったうえでの判断だった。

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