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WECARS首脳が語る「ビッグモーター再建」への途 一生懸命な社員がほとんど「攻めに転じる」

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山内務/やまうち・つとむ 1966年生まれ。1989年慶應義塾大学法学部卒業、伊藤忠商事入社。2018年住生活経営企画部長、2023年執行役員生活資材・物流部門長などを歴任。2024年5月にWECARSに出向し、取締役副社長(編集部撮影)

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中古車販売大手ビッグモーターの“保険金水増し請求問題”が大炎上したのは2023年夏のこと。世間からのバッシングによる客離れや行政処分などの影響で経営危機に陥ったビッグモーターの買収に動いたのが、伊藤忠商事とその子会社・伊藤忠エネクス、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズだ。3社はビッグモーターとその子会社から事業承継をする形で、2024年5月に新会社の「WECARS(ウィーカーズ)」を発足させて再建に動いている。新会社は負のイメージを払拭して事業を軌道に乗せられるのか。WECARSの山内務副社長に聞いた。

――WECARSが発足して約半年が経ちました。想定と実情の乖離はありましたか。

だいたい思っていたとおりだ。むしろ、想定よりもよかったという印象の方が強い。社員を見ても悪い人はいないし、純粋で一生懸命に仕事をしている人がほとんどだ。悪事を働いていた人はすでに去っている。

ビッグモーターで問題が起こった原因は、人事や給与、コンプライアンス、教育などのいろいろな面でシステムがまるでなかったからだ。同社の制度は社員に優しくなかった。社員を大切にしていない制度だから、問題が起きた時に「現場で解決せよ」と求める。本部が寄り添わなかったので、現場が適当な処理をしてしまうという事態が起きていた。

“コンプライアンス“を知らない社員もいた

――コンプライアンス意識をどのように組織に浸透させていますか。

ビッグモーターからやって来た社員の中には、“コンプライアンス”という言葉さえも知らない人たちがいた。なので、WECARSでは「コンプライアンスとはこういうことだよ」というのを勉強するための研修ビデオをほぼ毎週観させている。

2024年5月に伊藤忠商事などが買収。7月後半からWECARSへ改装を進める。ビッグモーターのマイナスイメージを払拭できるか(筆者撮影)

内容はパワハラやセクハラ、下請法、情報漏洩などさまざまなジャンルだ。初歩的ではあるが、連続ドラマ仕立てで結構面白い。

ただ、ビデオだけでは一方的なインプットばかりになってしまうし、いつまでもこればかりやり続けるわけにもいかない。店舗によって雰囲気やカルチャーが多少違うので、最終的には店舗ごとにPDCAサイクルを回さなければいけない。

今すぐにそれをやろうとしてもできないと思うので、基本的には伊藤忠グループからコンプライアンスが身についている人員を10名送って監査部門を増強する。彼らが店舗を回って並走することで、今までの一方的な教育ではなく、現場に寄り添った教育ができる。

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