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伊藤忠が「ビッグモーター買収」に動いた舞台裏 ライバル商社が尻込む中で強気の「丸ごと買い」

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ビッグモーター
ビッグモーターのスポンサー候補にはオリックスやテレビショッピング大手のQVC、中古車販売店「ガリバー」を運営するIDOMといった企業も浮上した(撮影:風間仁一郎)

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急速に事業を拡大させた裏で修理費用の水増しや自動車保険金の不正請求を行っていた中古車販売大手のビッグモーター。一連の問題噴出で2023年7月に創業者の社長が辞任した。経営危機に陥った会社は伊藤忠商事などが事業買収を決めた。
事業を継承した新会社「WECARS」(ウィーカーズ)は2024年5月1日に発足した。それから2カ月を過ぎた今、再生が始まった現場とともに買収の舞台裏を取材した。
【配信予定】
7月11日(木)

新生「ウィーカーズ」店舗で進む現場重視の改革
7月12日(金)
「買収のキーマン」伊藤忠エネクス吉田社長が激白

「伊藤忠はとりあえず手を挙げて、倒産後に何かしらの資産を買い取ろうとしているだけではないか。本気で再生を考えているなら狂気の沙汰だ」

伊藤忠商事が中古車販売大手ビッグモーターの買収に向けて資産査定を開始すると発表した直後の2023年11月。ある金融関係者はそう言い放った。

「狂気の沙汰」と考えたのも仕方がない。買収の打診を受けたある商社幹部は、「いくつかの店舗は魅力的だったが丸ごと買収するには費用対効果がまるで見合わなかった」と明かす。

ビッグモーターは兼重宏行氏(2023年7月に社長辞任)が山口県で創業、約50年かけて業界大手へと育て上げた。だが、利益拡大のためには修理費用の水増しや自動車保険金の不正請求などをいとわない企業体質が白日の下にさらされた。

岡藤会長は「やってみろ」と一言

顧客離れは深刻だった。2023年9月には月次の売り上げが例年の10分の1ほどに縮小していた。

2023年9月期決算の決算にも影を落とした。売上高は5398億円と前期比で増収となったが、営業利益は73億円と前期比7割減に。最終損益は10月以降の損失見込みも計上したことで708億円の大赤字となった。前期は184億円の黒字だった。

再生の成否は信頼回復とその先の黒字転換にかかっている。だが、看板の掛け替えだけでは信頼の回復はままならない。

実際、伊藤忠商事では自動車分野を管轄する機械カンパニーを中心に、買収を躊躇する声も上がっていたという。多くが臆する中、強烈な剛腕ぶりで案件をまとめあげたのが、住生活カンパニー出身で伊藤忠エネクスの社長を務める吉田朋史氏(67)だ。

「苦境に陥ったビッグモーターを見て、まずは“適当に”行くぞと決めた。それでも本社との葛藤は何一つなかった。岡藤(正広・伊藤忠商事)会長も『まずはやってみろ』と」

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