台湾有事が懸念されて半導体などの生産拠点を他国に移す「脱台湾論」が広がる中、世界はかえって台湾企業の競争力を再認識しているようだ。
スマートフォンやノートパソコンなど電子機器産業の集積地である東アジアのサプライチェーンは、コロナ禍の半導体不足を経て、米中のハイテク覇権対立、それに台湾情勢という以前からの地政学リスクがいっそう顕在化している。
「台湾有事」リスクによる地位低下の危機感
5月30日から6月2日にかけて台湾の中心都市、台北でアジア最大級のIT見本市「コンピューテックス台北(台北国際電脳展、Computex)が開催された。出展企業数は1000社、展示は3000ブースとコロナ禍前に開催された2019年時と比較すると7割規模の回復にとどまったが、来場者数は2019年比で12%増の約4万7000人となった。
生成AIや次世代通信など新技術の披露や商談の場ではあるが、裏のテーマとして会場内を飛び交っていたのはサプライチェーンや台湾情勢だった。コンピューテックスの開会式典で台湾の蔡英文総統は「台湾が世界のサプライチェーンで引き続き影響力を発揮できるようにする」と語った。
念頭にあるのは日米欧などで急速に広がった「脱台湾論」、すなわち台湾から生産拠点を移転する動きや、台湾企業への過度の依存から脱しようとの考えだ。スマホやネットワーク機器に使われるプリント基板大手の台湾・コンペックの幹部は「昨夏から中国だけでなく台湾以外での生産拠点拡張を求めるアメリカの顧客企業の声が大きくなった」と明かす。
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