米中の戦略は台湾総統選にどう影響しているのか 冷静な台湾社会で「疑米論」が広がるか焦点に

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中国は台湾の蔡英文総統が訪米したことに反発して軍事演習で台湾を威嚇した。一方で同時期に訪中した馬英九前総統は歓迎した。米中の動きは来年1月の総統選情勢にどう影響するか。(台湾政治研究者・小笠原欣幸氏の連載第2回、前回記事はこちら

台湾の蔡英文総統とアメリカのマッカーシー下院議長
蔡英文総統の訪米にマッカーシー議長は超党派での支援を強調した(Philip Cheung/The New York Times)

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3月末から4月初めにかけて、台湾の蔡英文総統はアメリカを訪問した。それと同時に野党の中国国民党(国民党)に属する馬英九前総統は先祖の墓参りを名目に台湾の総統経験者として初めての訪中を果たした。

台湾では来年1月に総統選挙を控え、その序盤戦が始まっている。台湾の新政権のスタンスは米中各国の戦略に大きな影響を与えるが、台湾の選挙情勢も米中要因が複雑に絡んでくる。蔡氏と馬氏の動きやそれに対する米中の反応は台湾社会にどのような影響をもたらしているのか。

中国の軍事演習に冷静な台湾社会

今回、蔡総統は中米のグアテマラとベリーズを訪問するにあたって、その前後に「トランジット」という名目でアメリカに入った。そこでマッカーシー下院議長と会談したが、中国はこれに反発。軍の航空機や艦船を台湾周辺に動員して軍事演習を行い、台湾を威嚇した。

筆者は中国の軍事演習直後に台湾に渡航した。台南で市長や地元政治家、市民らに話を聞く機会があった。台南は市内に空軍基地がある。中国軍機が台湾の防空識別圏に接近すると台湾空軍のF-16戦闘機がスクランブル発進し、轟音を響かせ市中心部上空を飛行する。

筆者が台南を訪れた時には中国の軍事演習は終わっていた。それでもF-16が2機で編隊を組んで、飛行しているのを何度も目撃した。つまり、台南市の中心部にいれば中国の圧力をいやがおうでも意識するはずだ。

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