2016年に蔡英文氏は総統選挙で勝利した際に「謙虚に、謙虚に、また謙虚に」と語っていた。今こそ民進党にはその謙虚さが求められる。
中国との緊迫した情勢が続いたことで世界的な注目が集まっている台湾。11月末に行われた統一地方選挙で与党・民主進歩党(民進党)は惨敗した。
その結果は多くの台湾研究者やメディアの予想どおり(「台湾人はなぜ地方選で親中政党を支持するのか」を参照)だったが、親中政党・中国国民党に大敗したことを受けて、民進党を率いる蔡英文総統は党のトップである主席を辞任した。
広がった「民進党嫌い」の雰囲気
民進党の敗北は同党内でも予想されていたとはいえ、その敗北ぶりは民進党幹部が記者に「僕たちはこんなに嫌われていたのか」と吐露するほどだった。
最大の焦点だった首都・台北市の市長選では、新型コロナ対策の陣頭指揮をとり一時は「鉄人大臣」として人気を博して日本でも有名となった陳時中・元衛生福利部長(大臣)を起用したが、蔣介石のひ孫である国民党の蔣萬安候補を相手に得票率で10ポイント以上の大差をつけられ敗北した。
もう1つの注目選挙区・桃園市でも12ポイントの得票率の差で民進党の候補者が大敗した。21県市の首長ポストのうち国民党が13県市で勝利し、民進党は5県市しか獲得できなかった。2018年の前回選挙でも民進党は国内での性急な改革が批判を招き、7県市でしか勝利できなかったが、今回はポストをさらに減らしたうえ、民進党が地盤とする台湾南部の県市で国民党候補者が善戦して接戦となるなど、大惨敗だった。
民進党は本当に「嫌われていた」。同党と蔡英文政権は2020年の国政選挙で大勝して以降、新型コロナ対策や中国からの統一圧力に毅然と対応する姿勢が評価され、高い支持率を維持してきた。しかし、それが民進党内の驕りにつながり、コアな支持層以外からは呆れや反感を招いた。
「最近の蔡英文や陳時中ら民進党の政治家の態度はひどい」「上から目線でまったく庶民のことを考えていない」「傲慢な民進党にこれ以上好き勝手させてはいけない」。これらの民進党を嫌う声は台湾で政治の話になる度に聞こえてきた。
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