国民に嫌われた台湾与党「民進党」は復活できるか 傲慢さと驕りを反省し謙虚さを取り戻す必要

✎ 1〜 ✎ 11 ✎ 12 ✎ 13 ✎ 最新
拡大
縮小

2016年に蔡英文氏は総統選挙で勝利した際に「謙虚に、謙虚に、また謙虚に」と語っていた。今こそ民進党にはその謙虚さが求められる。

地方選で大敗を喫し、頭を下げる蔡英文総統(写真左)。蔡総統はその後党のトップである主席を辞任した(写真・共同通信/ロイター)

特集「緊迫 台湾情勢」の他の記事を読む

中国との緊迫した情勢が続いたことで世界的な注目が集まっている台湾。11月末に行われた統一地方選挙で与党・民主進歩党(民進党)は惨敗した。

その結果は多くの台湾研究者やメディアの予想どおり(「台湾人はなぜ地方選で親中政党を支持するのか」を参照)だったが、親中政党・中国国民党に大敗したことを受けて、民進党を率いる蔡英文総統は党のトップである主席を辞任した。

広がった「民進党嫌い」の雰囲気

民進党の敗北は同党内でも予想されていたとはいえ、その敗北ぶりは民進党幹部が記者に「僕たちはこんなに嫌われていたのか」と吐露するほどだった。

最大の焦点だった首都・台北市の市長選では、新型コロナ対策の陣頭指揮をとり一時は「鉄人大臣」として人気を博して日本でも有名となった陳時中・元衛生福利部長(大臣)を起用したが、蔣介石のひ孫である国民党の蔣萬安候補を相手に得票率で10ポイント以上の大差をつけられ敗北した。

もう1つの注目選挙区・桃園市でも12ポイントの得票率の差で民進党の候補者が大敗した。21県市の首長ポストのうち国民党が13県市で勝利し、民進党は5県市しか獲得できなかった。2018年の前回選挙でも民進党は国内での性急な改革が批判を招き、7県市でしか勝利できなかったが、今回はポストをさらに減らしたうえ、民進党が地盤とする台湾南部の県市で国民党候補者が善戦して接戦となるなど、大惨敗だった。

民進党は本当に「嫌われていた」。同党と蔡英文政権は2020年の国政選挙で大勝して以降、新型コロナ対策や中国からの統一圧力に毅然と対応する姿勢が評価され、高い支持率を維持してきた。しかし、それが民進党内の驕りにつながり、コアな支持層以外からは呆れや反感を招いた。

「最近の蔡英文や陳時中ら民進党の政治家の態度はひどい」「上から目線でまったく庶民のことを考えていない」「傲慢な民進党にこれ以上好き勝手させてはいけない」。これらの民進党を嫌う声は台湾で政治の話になる度に聞こえてきた。

次ページ「厚顔」「傲慢」…批判を集めた民進党候補者たち
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
緊迫 台湾情勢
米中対立、「台湾」が緊迫の焦点となる2つの事情
テクノロジー覇権争いと民主主義の重要なカギ
中国の「台湾侵攻」に日本が備えておくべき理由
「巻き込まれたくない」という話では済まない
中国が悲願の「台湾統一」へ使い分ける2つの手段
軍事行動に限らず現地協力者を通じた迂回策も
台湾TPP加盟申請で問われる「岸田新政権」の手腕
中国が先に申請したことで揺れる台湾政府
TPP加盟申請で激突、台湾と中国に求められる条件
国際政治と経済分野の識者はこう見る
台湾の最大野党が「蔡英文」の牙城を崩せない憂鬱
民意と乖離目立つ対中姿勢、カギは経済の議論
ウクライナで「台湾侵攻」の可能性は高まったのか
問われる戦略的価値、日本の当事者意識も重要
バイデン大統領の「台湾防衛」発言に透ける真意
日本として対応を平時から議論しておくべき
ペロシ議長を歓迎した台湾に残された爪痕と自信
いたずらに緊張高めたが抑止強化は続けるべき
台湾包囲の軍事演習で中国が抱えた「ジレンマ」
中台関係に詳しい東京大学・松田康博教授に聞く
台湾人はなぜ地方選で親中政党を支持するのか
巨大権力警戒、日本人が知らないバランス感覚
国民に嫌われた台湾与党「民進党」は復活できるか
傲慢さと驕りを反省し謙虚さを取り戻す必要
台湾総統選、どん底から立ち直った民進党の実力
民進党は序盤の優勢をいつまで継続できるのか
米中の戦略は台湾総統選にどう影響しているのか
冷静な台湾社会で「疑米論」が広がるか焦点に
台湾の国民党が「親中」と呼ばれている数奇な経緯
敵対していた中国共産党との協力は約20年前に
知っているようで知らない「台湾独立」の真の意味
中国の情報戦で誤解も広がる重要キーワード
それでも世界の電子産業は台湾から離れられない
サプライチェーンの再編も台湾企業頼み続く
台湾総統選まで半年、第3候補は本当に躍進するか
支持率3位の候補が二大政党に食い込む波乱
台湾総統選で第3候補が意外な人気を集めた背景
受け答えのうまさと裏腹の失言という弱点
中国に「悪夢」?カリスマ経営者の台湾総統選出馬
利益誘導の限界露呈、民進党3期連続が現実味
台湾総統選、「8月決戦」の結末は与党候補に軍配
勝算なき著名実業家の参戦で混迷する野党勢力
台湾総統選、ラスト3カ月で劣勢野党の逆転あるか
難しい野党連合の実現、与党優勢で攻防続く
ハードウェアの強みを生かし世界の企業と接点
台湾総統選に大異変、急転直下の野党統一候補へ
選挙戦仕切り直し、野党連合は最後までもつか
台湾総統選、野党連合「ドラマ」終幕から3者競争へ
与党のリードは続くか、選挙戦はどう動くか
台湾総統選まで3週間、野党逆転・中国介入あるか
終盤戦を左右するのは突発的事態や外的要因
台湾・国民党への日本の懸念と期待は行きすぎだ
見るべきは「政党」ではなく台湾の「民意」だ
台湾総統選の争点には「92年コンセンサス」も
米中間で絶妙なバランス感覚をもつ台湾の有権者
台湾では中国との距離感が対立軸としてある
台湾の人たちは次の4年をどのように選んだのか
2024台湾総統選、小笠原欣幸の完全徹底解説
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内