台湾総統選、どん底から立ち直った民進党の実力 民進党は序盤の優勢をいつまで継続できるのか

✎ 1〜 ✎ 12 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 最新
拡大
縮小

台湾では2024年1月に総統選挙が行われる。新政権のスタンスが米中の戦略に与える影響はかつてなく大きい。来年までの選挙戦の行方を台湾政治研究者・小笠原欣幸氏が解説していく。(連載第1回)

台湾総統選候補者、民進党の頼清徳副総統
民進党の総統候補者・頼清徳氏は台南市で後援団体を設立した(筆者撮影)

特集「緊迫 台湾情勢」の他の記事を読む

台湾では来年1月13日に行われる総統選挙を控えて、選挙戦が始まっている。スタートダッシュを決めたのは現在の蔡英文総統を支える与党・民主進歩党(民進党)で、頼清徳副総統を後継者に決定した。一方で、野党の中国国民党(国民党)は誰が候補になるのか不透明さが増している。

民進党は地方選大敗から巧妙な立て直し

4月12日、民進党は頼清徳副総統を公認候補にすることを正式に決定した。昨年11月に行われた統一地方選挙で民進党は大敗しており、頼氏は1月から党主席を兼任して民進党の立て直しに務めてきた。

頼氏が出馬することは昨年から既定路線だったが、頼清徳派と蔡英文派の間にはしこりがあり、両派の党内権力争いは不可避とみられていた。しかし、地方選の大敗があまりにも強烈であったため、蔡氏が責任をとって身を引き、頼氏がすんなりと党主席に就任。党内の主導権を握ることができた。

頼氏は主席就任後、民進党の長期政権が続いて腐敗が指摘される台南市の党員説明会で、市長や同市選出の立法委員(国会議員)、市議会議員など党の公職者を全員集めた。そこで支持者に対して謝罪をさせ、同党の「再生」を誓うパフォーマンスを行った。

次ページまさかの国民党の地盤で大勝利
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
緊迫 台湾情勢
米中対立、「台湾」が緊迫の焦点となる2つの事情
テクノロジー覇権争いと民主主義の重要なカギ
中国の「台湾侵攻」に日本が備えておくべき理由
「巻き込まれたくない」という話では済まない
中国が悲願の「台湾統一」へ使い分ける2つの手段
軍事行動に限らず現地協力者を通じた迂回策も
台湾TPP加盟申請で問われる「岸田新政権」の手腕
中国が先に申請したことで揺れる台湾政府
TPP加盟申請で激突、台湾と中国に求められる条件
国際政治と経済分野の識者はこう見る
台湾の最大野党が「蔡英文」の牙城を崩せない憂鬱
民意と乖離目立つ対中姿勢、カギは経済の議論
ウクライナで「台湾侵攻」の可能性は高まったのか
問われる戦略的価値、日本の当事者意識も重要
バイデン大統領の「台湾防衛」発言に透ける真意
日本として対応を平時から議論しておくべき
ペロシ議長を歓迎した台湾に残された爪痕と自信
いたずらに緊張高めたが抑止強化は続けるべき
台湾包囲の軍事演習で中国が抱えた「ジレンマ」
中台関係に詳しい東京大学・松田康博教授に聞く
台湾人はなぜ地方選で親中政党を支持するのか
巨大権力警戒、日本人が知らないバランス感覚
国民に嫌われた台湾与党「民進党」は復活できるか
傲慢さと驕りを反省し謙虚さを取り戻す必要
台湾総統選、どん底から立ち直った民進党の実力
民進党は序盤の優勢をいつまで継続できるのか
米中の戦略は台湾総統選にどう影響しているのか
冷静な台湾社会で「疑米論」が広がるか焦点に
台湾の国民党が「親中」と呼ばれている数奇な経緯
敵対していた中国共産党との協力は約20年前に
知っているようで知らない「台湾独立」の真の意味
中国の情報戦で誤解も広がる重要キーワード
それでも世界の電子産業は台湾から離れられない
サプライチェーンの再編も台湾企業頼み続く
台湾総統選まで半年、第3候補は本当に躍進するか
支持率3位の候補が二大政党に食い込む波乱
台湾総統選で第3候補が意外な人気を集めた背景
受け答えのうまさと裏腹の失言という弱点
中国に「悪夢」?カリスマ経営者の台湾総統選出馬
利益誘導の限界露呈、民進党3期連続が現実味
台湾総統選、「8月決戦」の結末は与党候補に軍配
勝算なき著名実業家の参戦で混迷する野党勢力
台湾総統選、ラスト3カ月で劣勢野党の逆転あるか
難しい野党連合の実現、与党優勢で攻防続く
ハードウェアの強みを生かし世界の企業と接点
台湾総統選に大異変、急転直下の野党統一候補へ
選挙戦仕切り直し、野党連合は最後までもつか
台湾総統選、野党連合「ドラマ」終幕から3者競争へ
与党のリードは続くか、選挙戦はどう動くか
台湾総統選まで3週間、野党逆転・中国介入あるか
終盤戦を左右するのは突発的事態や外的要因
台湾・国民党への日本の懸念と期待は行きすぎだ
見るべきは「政党」ではなく台湾の「民意」だ
台湾総統選の争点には「92年コンセンサス」も
米中間で絶妙なバランス感覚をもつ台湾の有権者
台湾では中国との距離感が対立軸としてある
台湾の人たちは次の4年をどのように選んだのか
2024台湾総統選、小笠原欣幸の完全徹底解説
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内