TPP加盟申請で激突、台湾と中国に求められる条件 国際政治と経済分野の識者はこう見る

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中国と台湾があい前後してTPPに加盟申請した。加盟によって中国と台湾の関係や、日本はどんな影響を受けるのか。

台湾と中国は、TPP加盟交渉を進めるうえで、参加国にどう働きかけるのか(写真:EPA=時事)

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台湾政府は9月23日に、TPP(環太平洋経済連携協定)への加盟申請を発表した。ところがその前週の16日には、中国も加盟申請を発表。中台関係は深刻さを増している(背景に関する、詳しい解説はこちら)。双方の動向と影響、そして2021年のTPP議長国である日本はどう対応すべきなのか。中国と台湾の国際政治や経済に詳しい識者に話を聞いた(インタビューは書面による)。

 

今加盟申請をしなければ台湾にチャンスはなかった

東京大学教授/松田康博

まつだ・やすひろ/1965年生まれ。1988年、麗澤大学外国語学部中国語学科卒。1990年、東京外国語大学大学院地域研究研究科修了。1994-1996年、在香港日本国総領事館専門調査員。1997年、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。2003年博士(法学)学位取得。1992年-2008年防衛庁(省)防衛研究所で助手・主任研究官。 2008年東京大学東洋文化研究所准教授を経て、2011年より現職(写真:本人提供)

台湾のTPP加盟申請は、中国の加盟申請に迫られたものだろう。日本の福島県産をはじめとする5県の食品輸入制限の解除など、内政上の制約も抱えているため、台湾は機先を制した加盟申請ができなかった。

【キーワード解説】

食品輸入問題

台湾は、東京電力福島第一原発事故以降、福島県産など5県産食品の輸入を禁止している。TPP加盟は参加国すべての同意が必要であり、日本とは5県産食品の輸入規制の撤廃が加盟交渉の焦点となる。

中国がTPPに加盟申請し、台湾の加盟申請に反発していることで台湾のTPP加盟の阻止を図ることは明確となった。ただ台湾は今申請をしなければ、加盟のチャンスは永遠に失われただろう。2021年4月に行われた日米首脳会談では「台湾海峡の平和と安定の重要性」などが提起された。日本との関係が極めて良好であることも、台湾が加盟を申請する際の追い風となった。

中国と台湾の加盟申請に対して日本の新政権は徹底的に戦略を練る必要がある。中国との交渉では、TPP側が中国に合わせるのではなく、中国側がTPPに合わせるよう、安易な妥協をしないことが重要だ。一方で台湾に日本の食品輸入規制解除を選択させるには中国との交渉を進めた方がよい。また中国との交渉が米国のTPP復帰の呼び水になることを期待したい。

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