まだ「円安は日本にプラス」と言っていられるのか 円安は社会における優勝劣敗の徹底を促す現象
円安の終わりはなかなか見えず、1ドル=160円台まで進んだ。「円安の功罪」をめぐる論争を総括する。
2022年3月に始まった円安局面において、断続的に「円安は良いのか、悪いのか」といった円安功罪論を問う議論が話題になりやすくなっている。
日々、多くの企業、多くの業種の方々とお話しさせていただいている経験から言わせてもらえば、円安の功罪が争点化しているのは学者やエコノミストのような世に通じていない人々の論壇だけで、「円安はもはや日本経済にとってコストであって是正されるべき」が世論の大勢と感じられる。
事実、「まだそんなこと(円安のメリット)を言っている人がいるんですか」と言われた経験が筆者には複数ある。
現状、日本で起きているのは「インフレ税による実質所得と実質消費の抑圧」であり、円安は陰に陽にこの現象に深く関わっている。多くの日本国民が円安のメリットよりデメリットに着目し、その緩和を訴えるのは自然な話だ。
多くの国民が注目するこのテーマについて、論点整理してみたい。
経済主体ごとで円相場の価値観は違う
まず、円安功罪論の要諦は、総論と各論で結論が違うことを認めることだ。
ある為替水準がプラスかマイナスかは経済主体ごとに違う。そして、どちらも間違っていないので議論はいつまでも平行線になる。筆者は年間100社以上、輸出企業、輸入企業、機関投資家を回るが、円相場に対する価値観は皆違うし、違って当然である。
総論については2022年1月に日銀が展望リポートで計量分析とともに示した議論がわかりやすい。これを要約してみたものが表だ。
当時、黒田東彦前日銀総裁が「円安は日本経済全体にとってプラス」と連呼していたことからもわかる通り、結論もその通りに導かれている。
実際、こうした総論は直近の日銀短観(2024年6月調査)と整合的でもある。業況判断DIに関し、大企業・製造業が予想外の改善を見せる一方、大企業・非製造業は悪化した。ヘッドラインとして報じられたのは前者である。
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