2022年来、「円安は日本経済にプラスかマイナスか」という議論は何度行われてきただろうか。
2022年にはコロナ禍でインバウンド消費も制限される中、明らかに円安の恩恵が少なく、「悪い円安」が流行語となったが、経済再開が進む中でも依然として「円安の功罪」が議論されていることは、この問題が根深いことを印象付ける。
もっとも、これだけ議論しても決着がつかないことからも明らかなように、「円安のメリットとデメリットはどちらが大きいのか」に結論を出すことは難しい。これは、①効果が発現する時期に関して肯定派と否定派の議論が嚙み合わず、②最後はやってみないとわからない、からである。
超短期で「消費にマイナス」は異論なし
まずは効果が発生する時期のズレについて考えてみたい。
超短期スパンの「功罪」はそれほど難しくはない。短期的な円安のマイナス面については、コストプッシュ型のインフレ高進(実質賃金の低下)による家計の負担増がやや感情論的に議論されることが多いが、短期的に個人消費にネガティブな影響を与えるのはほぼ自明だろう。
例えば、内閣府の短期日本経済マクロ計量モデルの乗数分析を参考にすると、少なくとも円安1年目は輸入物価の上昇を背景とした交易条件の悪化(所得流出)によって名目GDPが減少する可能性が高く、実質的な所得と個人消費の減少が想定される。この点は「円安肯定派」も承知のうえだろう。
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