「良い円安・悪い円安」、3年後に下る軍配の決め手 人口減の日本は「円安で国内回帰」できるのか

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「国内投資の促進」には2つの視点がある。1つ目は外資系企業が日本に生産拠点を作るといった対内直接投資である。2つ目は、日本企業の国内回帰である。

現状の金額規模としては対内直接投資が約5兆円で、日本企業の国内における設備投資は約15兆~20兆円程度あり、海外現地法人の設備投資が約5兆円である。海外現地法人の設備投資が国内の設備投資に振り替えられることが期待される。対内直接投資も海外現地法人の設備投資もともに年5兆円規模となっている。

国内回帰が進んだかどうか、評価は3年後

為替感応度の観点からは、対内直接投資は比較的動きが早く、為替レートに対して1年のラグで動いている。

他方、国内投資については結果が出るまでに時間がかかりそうである。日本企業の「海外設備投資比率」はドル円相場に対して約3年遅れで推移している。

したがって、過去の傾向の通りとなれば、2022年来の円安の効果が表れるのは2025年度となる。

国内投資が限定的となることによって「円安否定派」に軍配が上がり、「悪い円安」が周知の事実となるのか、3年後の評価を待ちたい。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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