他方、ややスパンを伸ばして考えると(短期スパン)、個人消費の悪化という犠牲よりも、輸出の増加や企業の設備投資の増加という期待が高まってくる。徐々に輸出が増えて貿易収支が改善するという「Jカーブ効果」への期待も根強い。これは円安発生から1年程度と考える向きが多そうである。
さらにスパンを伸ばして考えると(中期スパン)、円安で国内の投資コストが減少し、企業の国内回帰が進むことで設備投資が増え、円安の恩恵がじわじわと生じるという効果が期待できる。これは円安発生から2~5年後程度と考える向きが多そうである。
長期のデメリットは企業の努力次第?
長期スパンになってくると、円安否定派の反論も生じてくる。それは、円安によって輸出が押し上げられる場合、価格競争が重視されてしまって、企業が商品やサービスの付加価値を高める努力を怠るようになるというものである。
しかし、この見方には円安肯定派は賛成しないだろう。円安によって価格競争で有利な環境を作ったうえで、研究開発の努力も怠らなければ、円安は決してデメリットにはならないという主張もある。
この論点は、金融緩和政策の功罪とも同じ構図である。過度な金融緩和が低生産性のゾンビ企業を生むという見方もあれば(反リフレ派)、金融緩和によるリスクマネーの供給がイノベーションを発生させるという見方もある(リフレ派)。長期スパンの影響はやってみないとわからないと言ったほうがいいだろう。
以上をまとめると、「超短期」は円安否定派が優勢、「短期」「中期」は円安肯定派が優勢、「長期」はやってみないとわからない、となる。これでは「功罪」の決着はつきそうにない。
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