今の円安をめぐる「勝ち組」「負け組」の静かな対立 政府・日銀は人々の「苛立ち」にどう向き合うか
長引く円安、そして物価高。高水準の春闘賃上げ。バブル超えの株高。このような日本の経済状況は何をもたらすのか。
2023年以降、日本のマクロ経済政策に関わる議論は大変に奇異なものになった。
一方では、政府や日銀も、エコノミストも「賃金と物価の好循環」を謳い、輸入原材料高どころか賃上げさえも、価格に転嫁するのが当然であるかのようにいわれた。
経済政策の王道からすれば、賃上げは労働生産性の向上で吸収されるべきであるし、労働コスト上昇が起因となるインフレは是が非でも回避されるべきである。
政府が躍起となって推進してきた「賃金と物価の好循環」は、標準的な経済政策から見事に外れていた。
賃上げインフレは歓迎、円安インフレには対策
他方、政府は、急激な円安と輸入原材料高による物価上昇に対して大胆な政策を講じてきた。
ガソリン価格や電気料金などの値上げを緩和するために、莫大な補助金が投入された。また、家計の購買力が物価高で著しく低下したことが懸念され、執行コストが膨大になることが自明だったにもかかわらず、所得税の定額減税が強行された。
政府は、賃上げに起因するインフレを大歓迎する一方、円安や輸入原材料高による物価上昇には、躍起となって対策を講じてきたわけである。
こうした対照は、この春闘に如実に表れた。
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