(ごまかせと命じた自覚は)ございません 東芝、田中社長の引責辞任会見の詳報

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――従業員のことを思ってと言っていたが、利益のカサ上げのためにキャリーオーバー(損失の先送り)を田中社長が認識していたと報告書に書いてある。何でも「報告書に書いてある」というと、誠実に答えていないという印象を従業員が受けるのではないか。田中社長は認識していたのか。

田中:本日をもって辞任をすることは、大切な仲間の20万人の従業員のみならず、株主やすべてのステークホルダーに、今回の不適切な会計処理が行われていた経営責任として辞任する。一刻も早く、新しい体制で一歩を踏み出すためだ。従業員だけのため、という意識ではない。

利益のカサ上げについて、報告書にあったが、私自身、不適切な会計処理がされたとは認識していなかったが、それを含めて第三者委員会の報告書を精査し、内容について認識が間違っているのであれば、きちんと改めたい。

――「チャレンジ」について、四半期末が近づき、達成が困難になってからも示されたということだが、なぜこのようなことをしたのか。

田中:少なくとも私は2013年の6月25日以降、あるいは2013年度、2014年度の予算や月次報告を受けた後の必達目標値については過大な要求をしたという認識はない。期末、月末になって過大な要求をしても、実現可能であれば努力してできるが、努力してできなければ、必達目標として要求するのが適切ではないという認識はある。必達目標値の要請については、きちんと理由があり、実現可能なレベルで各カンパニーに要請していたと認識している。

経理・財務部門の強化を計画

――問題の端緒が証券取引等監視委員会(SESC)から検査を受けたことだった。この検査がなければ東芝は今回の問題を公にしなかったのか。1500億円超える修正金額をどう回収しようとしていたのか。

田中:SESCからの開示検査、報告命令に端を発したのは事実。それがもしなければ、という仮定の話に答えるのは非常に難しい。適正な会計処理は経理、財務部門を通じて強化を図らなければならないと1年くらい前から認識していた。具体的な何かがあったわけではないが。

私の若い頃の認識は、経理・財務部門は、たとえ社長がこういう(不正な)ことをしろなどと指示をしても、止めるのが経理財務部門だと。そのように入社したころから認識していた。きちんと強化したほうがいいのではないかと、1年ほど前に前田と話をした。前田も同じように経理カンパニーの体制の強化をしないといけないという認識があった。CCFO(カンパニー最高財務責任者)という役職を作り、その任命は私から直接行った。この4月1日に実はそのように変えていた。具体的な懸念、事案があってそうしたわけではないが、経理部門以外にも何らか体制の強化、変更があるかもしれないと思っている。

前田:4月1日から、グローバルで財務会計業務を一元的に管理していこうとして、2016年度からIFRS(国際会計基準)を採用した。こういう動きを始めたのが数か月前。会計処理基準の見直し、厳格な運用については、第三者委員会からも指摘を受けている。特に工事進行基準については、マニュアルなどを策定中だ。これも第三者委員会からの重い指摘だったが、半導体の原価差額の調整方法を見直し中だ。投資家の信頼回復に向けて一丸となって進んでいきたい。

田中:誤解しないでほしいが、決して私の責任逃れで今、そういうことを申し上げたのではない。

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