(ごまかせと命じた自覚は)ございません 東芝、田中社長の引責辞任会見の詳報

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――今回、1500億円の過年度修正が必要ということで、パソコンと半導体、テレビに関する資産の減損の可否について検討するということだが、今回、ウエスティングハウスの事業についても不適切会が見つかったということだが、ウエスティングハウスは震災以前からのれんの減損をしていないと思うが、検討対象になるのか。

前田:減損の対象になるか否かは、個別の案件でなく、すべての事象について新日本監査法人が監査している。ウエスティングハウスが減損の対象であるかについては、現状、監査中であるという答えになると思う。ウエスティングハウスの不適切会計については、指摘を真摯に受け止めている。四半期ごとの取り組みが甘かったのではないかと非常に反省している。

――ウエスティングハウスについての見通しを聞いたが、原発事業が不透明という声もある中で、収益の柱を作っていくという話もあった。事業構造改革について、どのように考えているか。

田中:室町会長兼社長を中心にポートフォリオの変革、中期的な方向性を図っていくと思うが、私が経営方針説明でも申し上げたが、一つ大きな流れとしてBtoBへのシフトがある。その中で、NAND型フラッシュメモリーが大きな事業の柱で、原子力などの発電事業など社会インフラ事業が二本目の柱。柱というには程遠いが、ヘルスケア、IoTなどがまとまって1本になるかどうか。その3つが大きいところだ。

BtoC、PCやテレビ、家電は地域や製品を限定することで収益性を高め、戦っていく。数を追わない、規模を追わない、将来に向けたBtoBへのシフトを加速する。その中でもまだ小さいがヘルスケアは4000~4500億円の事業規模だが、幅広いヘルスケアを将来に向けて育てていきたいのは変わっていないが、今後、室町会長兼社長を中心に新しい東芝のポートフォリオを作っていくのだと思う。

――原発事業は見直す考えはあるか。

田中ウエスティングハウスについては、過半数を維持しながら新たな出資者を探す方向性は変わらない。ただ、新しい出資者とはまだ話をしているところはない。地球温暖化の問題を考えると、原子力発電はCO2の意味からいっても大変重要な電力源だと思うので、今後もウエスティングハウスは継続する。収益という面では燃料、大型機器などを中心に売り上げの80%を占めているのでそういう形で推進をしていきたいと思うが、新経営陣が考えていくと思う。

――報告書の中でPCの取引について、残り3日で120億円の利益を上積みしろと当時の佐々木社長から指示があったとある。常軌をいっした120億円の上積み要求に、田中社長はどうしてノーと言えなかったのか。

田中:大変申し訳ないが、回答を差し控えさせて頂きたい。

ーーPC部材の取引について不適切な会計を2004年から繰り返していたと、報告書にある。西田相談役がPC事業の黒字化し、その業績が社長昇格のポイントになったが、不適切な会計が利益改善に寄与したのか。

田中:2003年度にPCが大幅な赤字になり、さまざまな改善プロジェクトが起きた。その中で私の担当する調達で、いろんな部品の統一でコストを下げようとした。2004年度は為替環境も非常に良く、PCは黒字になった。(問題になった)取引手法によるコストダウンは非常に少なく、PCの黒字化とは関係ない。

――4月の段階では特別調査委員会という形で、第三者委員会による調査の形はとらないという判断をした。しかし、結果としてインフラ分野だけでなく、あらゆる部分で不適切だった。なぜ最初に第三者委員会の調査形態を取らず、インフラ分野に調査範囲を限定したのか。

室町:工事進行基準案件について報告命令が来て、調査してきた。調査の過程でほかの分野も調べなければと監査法人からも提言があり、全社的に調べるというステップになった。工事進行基準案件が発端で、このようにエスカレーションすることは当初からは予想できていなかった。

社外取締役を過半にする

――コーポレートガバナンスができていないという指摘があった。名門企業でなぜコーポレートガバナンスが機能しなかったのか。今後、どう再構築するのか。

田中:コーポレートガバナンスには自負があったが、資本市場、ステークホルダーに迷惑をかけたことをお詫びしたい。社外取締役を過半にし、取締役の人数を縮小して機動力を上げる。また、内部統制の機能をもっとあげる。完全に独立した組織として会計問題、コンプライアンス問題について、社外取締役を中心にして、問題を網羅的にチェックできる組織の立ち上げを考えている。

田中:最後に一言だけ私の方から。社長に就任し2年1か月。メディア、アナリストの皆様に大きな支援、指導を受けた。期待に応えられず、大変な事態を生じさせたことについて改めてお詫び申し上げたい。2年間のご支援に心から感謝を申し上げ、引き続き東芝をご支援、ご指導いただきたい。私の最後のお願いにさせていただきたい。2年間、大変ありがとうございました。

(撮影:尾形文繁)

山田 泰弘 東洋経済 記者

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やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

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