(ごまかせと命じた自覚は)ございません 東芝、田中社長の引責辞任会見の詳報

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田中社長は、報道陣の質問をかわすだけの場面も多かった

――東芝ブランドは大きく傷ついた。信頼回復のためには何が必要か。

田中:大変大きなブランドの毀損だ。140年の歴史の中で最大ともいえるブランドイメージの毀損があったと認識している。一朝一夕では回復できないと考えている。20万人の従業員が一丸となり、室町会長兼社長、経営刷新委員会、社外の専門家を踏まえた今後の再発防止策や(コーポレート)ガバナンス、日々の活動を通して、一日一日、全力で取り組む姿をご理解頂くしかないのではないか。時間がかかってもやり遂げなければならないことだ。

――今回の原因は収益力の低い事業で利益を上げようとしたことにあると感じている。なぜ、他の企業のように事業ポートフォリオの組みかえができなかったのか。

田中:今回の不適切な会計処理は、(収益力の低い)課題事業で起きているのではないかということだが、その背景は、第三者委員会の報告書を精査したうえで私どもなりの原因、事業という面での原因を考えていかねばならないと考えている。東芝の幅広い事業の全てで収益力が高く、競争力があればよいが、中には非常に厳しい事業もある。そして、今、収益力が良くても、将来にわたり継続できるとは限らない。競争力の強化、成長性について考えていかなければならない。今回の一つの原因であったかどうかは、今後、報告書を精査した上で、きちんと検討していかなければならないと思う。ただ、今回の事案だけでなく、課題事業や競争力が低い事業については、常にポートフォリオの変革などを会計処理とは別に、事業という観点で継続的に考えていかなければならない。

――田中社長は就任以来、新しい中期経営計画を達成しようとしたり、(収益面で)半導体に頼った一本足を止めようとしてきたりしてきたが、やり残したことは。

田中:やり残したことは、残念だが色々ある。収益率ということでは、NAND型フラッシュメモリー(への依存度が高い)というご指摘を皆さまから頂いた。それを2本、3本、4本と増やしていきたかったが、その途上にある。ただ、収益の柱を作ると言うことと、今回の不適切な会計というのは、必ずしも一致していないことがあると思う。やりのこしたことの中で、収益の柱を最終的には5本にしたいと言っていたと思うが、新体制で進んでもらいたい。

――パソコンの分野で(改革に取り組み)在庫の処分をしていたが、不適切な利益と認識していたからなのか。

田中:その点については、第三者委員会の報告書をご覧いただきたい。

――責任は経営陣にあると言ったが、前回の会見で、プレッシャーをかけるのは経営陣として当然だと言っていた。(報告書では)経営層が積極的に不適切な会計の指示をしていたという記載があるが、その点の認識は前回の会見から変わったのか。

田中:個々の事案についての答えは控えたい。順法や適正な会計処理は大前提。その中で適正な利益を上げて、事業を拡大する。そのための経営者としての考え方を追求していかなければならない。プレッシャーがあるから不適切な会計をしても許されるということではなかったとは思うが、そういうことが少しでもあったとすれば、経営陣として深く反省しなければならない。

(不正会計を)直接指示したという認識はない

――大前提をないがしろにするような指示はしていないという認識なのか。

田中:直接的な指示をしたという認識はない。

――報告書には、業績への悪影響を避けるため、田中社長自身が(不適切な会計を)容認していたという表現があるが、その通りなのか。

田中:報告書の中で許容していたという表現があると思うが、その点を含めて報告書を真摯に受け止め、今後の対応に生かしていく。あるいは、経営刷新委員会でのさまざまな再発防止を含めた中で対策を図っていきたい。

――報告書では、不適切な額が佐々木前社長の時代に拡大したとの指摘もある。佐々木前社長に対してどういう認識なのか。

田中:特に何も思っていない。

――室町会長は不適切会計について、知らなかったのか。

室町:今回の不適切会計については、報告書に名前の記載もないし、関与していないと考えている。ただ、会長としては、証券市場、株主をはじめとするステークホルダーに大変なご迷惑をおかけした。心からお詫び申し上げたい。

――9月以降の新体制で取締役に残るのか。

室町:現在のところ、まったくの白紙。経営刷新委員会、外部の専門家、社外取締役の意見を受けながら、議論していきたい。

――経営責任については、9月の株主総会までに判断するということだったが、なぜ今日付けの辞任に至ったのか。社外取締役からは想像以上に厳しい報告書が出てきたという声もあったようだが、それで辞意を表明したのか。

田中:6月25日の株主総会で9月まで信任を頂いた。あくまでも暫定的な選任を頂いた。今回、本日をもって社長を辞任するに至ったのは、一刻も早く、新しい体制で、大きく毀損した東芝のブランド(を回復させたい)、および、最も私が重要だと思っているのは、20万人の従業員だ。日々、業務に誠実に対応している従業員に一刻も早く、新たな気持ちで今まで以上に業務に精励して頂きたいという思いから、昨日報告書を受け取り、本日、辞任した。

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