対話の技法/言ってよいこと悪いこと 対話における発言の抑制

✎ 1〜 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 最新
拡大
縮小

英国の作家サルマン・ラシュディが1988年に発表した小説『悪魔の詩』には、イスラム教の開祖ムハンマドの生涯を戯画的に描いた部分があり、イスラム教を侮辱するものとされた。イスラム教徒の宗教的尊厳を傷つけたということで、当時の宗教的指導者ホメイニ師は、作者のラシュディに対して、全世界に通用する死刑宣告を下したのである。同書の翻訳にかかわった者も同罪とされ、日本語に翻訳した日本人の学者が殺害された。

これは極端な事例かもしれない。だが、「イスラム教徒は過激だから恐ろしい」などと、排斥的に考えるべきではない。世界のどこの誰が相手であれ、「尊厳」にかかわる部分については、慎重を期するに越したことはないのである。

自他の言動を評価する「偽善」という傾向

対話において「偽善」は避けるべきとされている。この場合の偽善とは、自分の言動を評価する規準と、相手の言動を評価する規準が異なることを意味する。

この意味からすると、誰しも偽善の傾向があるように思われる。偽善の傾向は、たとえば相手を徹底的に攻撃する「戦うコミュニケーション」において顕在化する。

基本的な発想としては、自分はつねに正義で、相手はつねに不義。

自分の相手に対する批判はつねに正当だが、相手の自分に対する批判はつねに不当な言いがかりである。

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
【資生堂の研究者】ファンデーションの研究開発の現場に密着
【資生堂の研究者】ファンデーションの研究開発の現場に密着
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT