対話の技法/対話の苦しみ 善意が無に帰するとき

対話の技法/対話の苦しみ 善意が無に帰するとき

北川達夫 日本教育大学院大学客員教授

「小さな親切、大きなお世話」という、何とも身もふたもない言葉がある。

ちょっとした善意が社会の潤滑油になる。それは否定しない。だが、自分では親切のつもりでも、相手にとっては迷惑の場合もあるのではないか。それも否定できまい。

まるで、篤実な道徳家と皮肉屋の道化の論争のようだ。対話においては、この両者の視点が必要である。決して道徳家だけ、あるいは道化だけの視点に立ってはいけない。

もう一つ。道徳の黄金律とは「何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにせよ」。これは『マタイ伝』の言葉である。これが東洋の『論語』においては、「己の欲せざるところ、人に施すことなかれ」となる。要するに、自分を規準にして、他者に何をすべきか、あるいは何をすべきではないかを考えるということだ。

これに対して、皮肉屋の劇作家バーナード・ショウは戯曲『人と超人』において「何事も人々からしてほしいと望むことは、人々にはそのとおりにしてはならない。好みは同じではないだろうから」と揶揄した。確かに、そのとおりではある。

この言葉は、対話的発想の基礎を成すものとして、前にも紹介したことがある。自分と相手は違う。自分にとって嬉しいことが、相手にとっても同じとは限らない。そのことを肝に銘じておかないと、多様な相手と対話するのは難しい。

だが、疑問に思わないか?

そんなことを言っていたら、何もできないではないか!

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