対話の技法/対話の苦しみ 善意が無に帰するとき

苦悩する人に、救いの手を差し伸べるのも、けっこう難しいものである。自分なりに相手の苦しみを理解して、精いっぱい支援しているつもりなのに、手ひどい拒絶の言葉に遭うことがある。

「私の本当の苦しみなんて、あなたにはわからない」

人間とは面白いもので、相手には自分のことが理解できないと考える一方で、自分には相手のことが理解できると考えがちである。ただ、そう考えていると、拒絶の言葉に深く傷つくことだろう。あるいは、強い憤りを感じることだろう。

「同じ経験をした者にしか、この苦しみはわからない」

これに対して「私にも同じような経験があるから、あなたの苦しみはわかる」と答えたらどうか?

それで同病相哀れむことは可能かもしれないが、必ずしもうまくはいかない。人間とは面白いもので、「同じ経験」を共有しているといっても、自分の経験は重く、相手の経験は軽く評価しがちなのである。

古典的な対話論では、困っている人、苦しんでいる人、悩んでいる人を目にしたときこそ、対話的に考えて行動すべきだと教えている。

他者の苦しみを見たことに苦しめ。それがたまたま他者の苦しみであり、自分の苦しみではないことに苦しめ。あるいは、他者の苦しみを見ても、自分が苦しまないことを恥じて、その恥のために苦しめ。

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