まず、原材料費の上昇が挙げられる。ココイチのカレーにはさまざまなスパイスや食材が使用されており、その多くは輸入品だ。円安が決定的な影響を与えている。食材自体が値上がっているのに加えて、輸送コストの増加もある。原材料のコストが上昇しているのは明白だ。
数カ月前に開催された決算説明会資料(2024年4月)でも通期で原材料の仕入れ価格が17億円も上昇したと発表した。連結で売上高が551億円で、営業利益が47億円の企業(2024年2月期)だからその影響度が大きいとわかるだろう。
なお、その仕入れ価格の影響が大きかったものとして、カレー原料のスパイス(+1億6200万円)だけではなく、豚しゃぶ(+1億700万円)など、さまざまにいたっている。
また、最近の天候不順や異常気象も農作物の価格に影響を及ぼす可能性がある。実際、昨今のアメリカでの牧草の干ばつにより飼育頭数が減少し、輸入牛肉は高騰している。またカレーのベースとなる野菜や穀物の価格が上昇することで、全体的なコストが押し上げられる可能性がある。
また次に、労働費用の増加も重要な要因である。実際に、先に上げた決算説明会資料では人件費の増加は連結営業利益の1億8000万円もの押し下げ要因だった。
日本では少子高齢化が進行しており、労働力不足が深刻化している。このため、飲食業界では人材確保のために賃金を引き上げる必要がある。特にコロナ禍以降、アルバイトが離れてしまったあと、ふたたび集めることが難しい状況にある。飲食業の賃金アップのためには、もちろん価格アップが必要となる。コストを負担するためにも、それは必須だ。
値上げの結果
ところで、お客は値上げの結果をどのように受けたのだろうか。同社は前年比率の売上高変化を発表しているので見てみよう。以前の2022年12月、2024年2月を確認したい。
結果でいえば、事実として(前年比率でいえば)影響を受けていないように見える。
一般的に、飲食店の値上げは顧客離れを引き起こすリスクがある。私が知っている企業人に聞いてみても「少しの値上げであっても、お客の離反を招く」と危機感をもっている。その理由としては、日本人が節約傾向にあるからだ。
先日報道されたとおり、26カ月も実質賃金がマイナスになっている。これは名目の賃金が上がっていても、それ以上に物価が上昇していることを意味する。そうすると消費が盛り上がることはなく、消費を控えようとする。
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