東京の「出生率0.99」を騒ぐ人に欠けている視点 若者はお金がなく婚姻数の減少が加速していく

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誤解しないでいただきたいのは、何も東京が優れているという話をしているのではありません。しかし、出生率だけを見ていると、最下位の東京が日本全体の足を引っ張っているように思ってしまいますが、むしろが出生率は最下位でも、出生数や婚姻数という観点では、減り続ける日本全体を多少なりともカバーしていたともいえるということです。

東京以外でみると、出生率の減少幅は婚姻数の減少=有配偶人口の減少と完全にリンクしており、少子化は婚姻減であるということが、ありありとわかります。

地方の人口減少分を考慮しても婚姻数に差

とはいえ、出生数や婚姻数が東京で多いのは、それだけ東京に若い女性が集中しているために、地方から女性が流出して、地方の婚姻減を招いているという意見もあるでしょう。

では、その人口減少分を考慮した、婚姻と出生の推移を計算してみます。
まず、未婚人口の増減を考慮した婚姻数を見ると、それでも東京のほうがもっとも多く婚姻しており、地方と差は歴然です。

一方、有配偶人口の増減を考慮した出生数でみると、東京と地方の39道府県がほぼイコールで推移していますし、それほど大きな差はありません。これは、東京も地方も結婚した女性はそれなりに多く子どもを産んでいることを示します。

以上からわかることは、東京も地方も結婚した女性の出生数は変わらず、結果として出生数が激減しているのはほぼ婚姻数の減少であるということです。

少子化対策というと、子育て支援ばかりが取りざたされますが、何度も言うように、結婚した夫婦の産む子どもの数は変われません。子育て支援などの給付金があろうとなかろうと、結婚した夫婦は子どもを産みます。言い方を変えれば、「子ども」を産んだらいくらあげます」のような出生インセンティブをどれだけ投下しても、それで出生数が純増する効果はほとんどなく、むしろ今いる子どもたちへの教育の質への選好意識が高まります。つまり、それは、皮肉にも子育てコストのインフレを起こしてしまうわけです。

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