ふるさと納税にも採用「遺伝子検査キット」の危うさ 専門家が自粛を求めても広がる子ども向け検査

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「科学的根拠が不十分なのに、誤解を招き、子どもの将来に影響を与える鑑定結果を出すことは倫理的な問題が大きい。また、医学的に本当に必要な遺伝子検査にも不信感が広がり、遺伝子医療の信頼を損ねかねない」

医学的な遺伝子検査では、特定の遺伝子変異が引き起こす病気を診断し、予防医療を実施する場合がある。その一例として知られているのが、ハリウッド俳優のアンジェリーナ・ジョリーが、乳がんや卵巣がんなどの発症確率を高める「BRCA1」という遺伝子に変異があり、2つの乳房と卵巣を切除する手術を受けたことだ。こうした検査には、十分な説明と本人の理解が欠かせない。青木氏は、「検査を受けてもらう前には、成人では本人に1時間ほどカウンセリングをする。未成年者を検査するときも、両親とその子の年齢に合わせた資料を作成し、よりよい医学的な選択ができるよう支援している」と話す。

それが民間の遺伝子検査では、鑑定結果は郵送か、インターネット上で確認することがほとんどだ。近年は、ゲノム研究の成果で高血圧や糖尿病などの遺伝要因が数多く明らかになっている。福嶋氏は「遺伝情報をどう解釈するかは、医学の発展で変わる可能性がある。民間の遺伝子検査は、そのアフターケアもない」と指摘する。

「言われていることはよくわかっている」

こういった批判に、民間の検査会社はどう答えるのか。

福岡市のふるさと納税返礼品に遺伝子検査キットを提供している「DNA FACTOR」の創業者で、同社取締役の米田真耶人氏は、「子どもの可能性を広げるためのツールとして活用してもらっている」と話す。学会のガイドラインなどで未成年者への検査自粛が求められていることは知っているとしたうえで、同社はこれまで2万2314人に遺伝子検査を実施し、うち8147人が子どもだったという(23年3月時点)。能力に関する遺伝子検査について専門家から「占いのようなもの」と指摘されていることについては「全然否定しないし、言われていることはよくわかっている」(米田氏)と話した。

子どもが対象の遺伝子検査は、同社以外にも化粧品メーカーのDHCなど複数の企業がインターネットで販売している。日本の遺伝子検査は、科学的根拠のあるものと占いレベルのものが一般の人に判別できない混沌とした状態にある。そして、福岡市のふるさと納税サイトには、子ども向け遺伝子キットが今でも掲載されたままだ。

西岡 千史 ライター

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にしおか・ゆきふみ

1979年、高知県生まれ。早稲田大学第二文学部卒。「THE JOURNAL」「週刊朝日」「AERA dot.」編集部を経て、現在はフリーランス記者。

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