「デキがイマイチで無料」ラヲタ店主の異様な熱意 レギュラーメニューがない異色ラーメン店の背景

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さらには、固定の営業時間をやめた。毎日X(旧Twitter)で営業開始直前に今日のラーメンと営業時間を呟く方式に変えた。

ネギラーメン
6月に提供していたラーショ系の「ネギラーメン」。ものづくりが昔から好きだからこそ、毎週違うラーメンを作るほうが肌に合った(筆者撮影)

元住吉時代から限定ラーメンは月イチで作ってきていて、経験値としてレシピの蓄えはあった。元々ゼロイチのものづくりが好きだということもあり、同じメニューを作り続けるよりは毎週違うものを作ったほうがストレスが少ないというのもあった。自分らしい、店の在り方の模索は続いた。

営業時間に余裕が出るようになって、道理さんは再びラーメンの食べ歩きを始めた。もともとはインプットがないとアウトプットができないからという理由で再開させたが、実際に食べ歩いてみるとその楽しさに改めて気づいた。

「喜多方ラーメンを作ろうと思ったときに、そういえば現地に行ったことがないことに気づいたんです。そこで“研究”という名目で回り始めたのですが、どんどん楽しくなってきて、そのまま自分がラヲタになってしまったんです。これは完全に『渡なべ』の渡辺樹庵さんの影響です」(道理さん)

道理さんが専門学校時代から大好きだった「渡なべ」の店主・渡辺樹庵さんは、ラーメン店主の中でも屈指のラヲタとして知られ、全国のラーメン店をくまなく食べ歩いている。地方の細かなご当地ラーメンにも傾倒していて、その味を再現しイベントやラーメン施設で提供することでもよく知られている。

道理さんは以前から「渡なべ」の周年イベントに行ったり、パーティーで挨拶したりと樹庵さんと面識があったが、その後親睦を深め昨年から樹庵さんのYouTube番組にゲストで出るようになった。

「樹庵さんの番組で『ラーメン屋さんってあまり食べ歩きしていないですよね』と不用意な発言をしてしまい、ここから自分も真剣に食べ歩きをしないとなと思い、どんどん杯数が増えていきました。そのまま食べ歩きが面白くなって、いつのまにかラヲタになってしまったんです」(道理さん)

自分だけのラーメンに出会いたい

動物系と魚介系のWスープのラーメン
4月に提供していた動物系と魚介系のWスープのラーメン。「魚介がここまで引き立つか」と驚かされ、塩味のインパクトも素晴らしい一杯だった。90年代後半から流行っていた、決して新しくはないラーメンだが、道理さんの歴史への深いリスペクトを感じた(筆者撮影)
できる人だけが知っている 「ここだけの話」を聞く技術
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今の営業スタイルは精神的に楽と言いながら、道理さんの心の炎はまだ消えてはいない。「自分のラーメンというものがない」というわだかまりを抱えながら、業界に自分のラーメンをぶつけるラストチャンスと思い、日々ラーメンに向き合っている。

「僕は今39歳ですが、40代の店主の勢いはすごいなと日々感じています。ラーメン業界の40代はいちばん大事だと思うんです。

ラヲタ活動をすることでそれぞれのお店の美点を凝視する機会が増え、ラーメン熱がまたどんどん高まってきています。まだ小さい炎ですが自分のラーメン店探しに邁進したいと思っています」(道理さん)

ラヲタと決別したことで、ラヲタになったという稀有な店主。これから自分だけのラーメンに出会い、道理イズムが生まれるその日を願っている。

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