「デキがイマイチで無料」ラヲタ店主の異様な熱意 レギュラーメニューがない異色ラーメン店の背景

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しばらくは元住吉の味のまま提供していたが、1年経った頃思い切って味をリニューアルすることにした。ユニコーンの出身である広島のラーメンを提供することにしたのである。「小鳥系」と呼ばれる広島のあっさりとしたラーメンが好きだった道理さんはその味を再現し提供を始めた。

このラーメンにお客さんのリアクションがとても良く、ラヲタだけでなく日常使いのリピート客が増えてきた。このまま認知が広がれば売上も安定してくるかなと思われた頃、コロナが直撃する。

関内はビジネス街で昼間のお客がいなくなり、横浜スタジアムでの野球の試合やコンサートもなくなった。全くお客が入らない日々が続く中、道理さんは2度目の移転を決意する。こうして2020年10月、大岡山に移転し、店名は「なるめん」とした。

「店名を変えることで移転ではなく“新店”という扱いになり、『TRYラーメン大賞』(ラーメンの年間アワード)に引っかからないかなと考えたんです。店名もラーメンも変えて、心機一転小さなお店をスタートしました」(道理さん)

町田家
2度目の移転で、大岡山へ。現在も営む「なるめん」だ(筆者撮影)

豚骨魚介に手打ち麺を合わせ、ラー油を加えたクセのある一杯を仕上げた。道理さんとしては自信のある一杯を提供していて、これなら『TRYラーメン大賞』の部門賞を狙えるのではと思っていたが、結果は箸にも棒にも掛からなかった。

もっと言えば、部門賞で該当したであろうMIX部門において掲載されたのはわずか1店舗のみで、他は該当なしとなっていた。自分のラーメンは相手にもされていないと感じ、道理さんは完全に心が折れてしまった。

「これで自分はラーメン業界の土俵から降りることを決意しました。ラヲタに注目されるお店にはせず、近隣のお客さんと常連さんのみを大事にしていこうと決めました。ここから『なるめん』はラヲタには来づらいお店にすることにしたんです」(道理さん)

ラーメン業界において、新店はラヲタが口コミを広げることによって、一気に話題店となり、上手くいけばネットを通じた集客が期待できる。アワードを受賞したお店も、ラヲタの口コミで話題になったところが数多い。しかし、ラヲタの意見に左右され、苦しむ店主も少なくなく、人気店になっても様々な苦労がある。

そういう意味では、その土俵から降りることは昨今の風潮から見れば逆張りでありながら、地域のラーメン店として生きるという「原点回帰」的なものとも言えるだろう。

「脱ラヲタ」が独自の店作りに繋がった

店内張り紙
「レギュラーメニューなし」「座席は4席のみ」「ワンオペで時間がかかると宣言」「不規則営業」…とても自由な営業スタイルだ(筆者撮影)

まずはレギュラーメニューをなくした。ラーメン店といえばお店の看板メニューが必ずあるものだが、レギュラーをなくすことによって毎週違うラーメンを提供するお店になった。

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