「デキがイマイチで無料」ラヲタ店主の異様な熱意 レギュラーメニューがない異色ラーメン店の背景

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しかし、道理さんに与えられた仕事は現場の仕事だった。「なんつッ亭」で4年働いていた経験者は即戦力と見なされ、すぐに現場を任されることになった。思い描いたキャリアが描けず、逆にラーメンのレシピなどを開発する商品開発部ならできるのではないかと模索したが、余りに狭き門でなかなか椅子が空かない。

「ここで時間を費やすのであれば自分のお店をやってしまおうと思い、退職して、物件探しと味づくりを始めたんです。以前から薄らぼんやりと独立の絵は描いていたので、少しずつお金は貯めていました」(道理さん)

道理さんはラーメン店の横のつながりがなく、相談する相手もおらず、何も分からないまま神奈川の元住吉にある居抜き物件を契約した。

こうして2016年12月「ナルトもメンマもないけれど」はオープンした。店名は道理さんが大好きなユニコーンの曲名「車も電話もないけれど」から来ている。

オープンも「他にないものを作りたい」で大失敗

しかし、オープン当初から上手くはいかなかった。お客さんにラーメンの味が認められなかったのである。

「お客さんが帰られてどんぶりを見ると、よく残されていてショックを受けました。『旨いものを作っているつもりなのに、なんで残されるんだろう?』と疑問を抱き続ける毎日でした。今思えば、経験値がなかったんだと思っています。修業時代は完成されたラーメンを作っていたんだなと改めて思いました」(道理さん)

調理風景
調理中の道理さん(筆者撮影)

道理さんは何時間もかけて仕込みをし、これだけ時間をかけているんだから旨いに決まっていると、自分のラーメンの味を過信してしまっていたのである。当時は知り合いもいなかったので、自分のラーメンを試食してもらうこともできなかったのもあった。

当時提供していたのは鶏清湯の塩ラーメンとスパイスを使った味噌ラーメン。もともとものづくりに興味があったことと、大好きだった「渡なべ」の唯一無二のラーメンへの憧れから、自分が食べて美味しいというよりも他にないものを作りたいという思いが先行していた。

塩ラーメンにはハーブやスパイスを使ったソースを上から垂らし、一部ではそのギミックが褒められたが、ハッキリ言って賛否両論が激しいラーメンだった。オリジナリティを求めすぎてバランスが取れていなかったと道理さんは振り返っている。

しかし、賞賛の口コミも多く、それがラヲタ(ラーメンヲタク)に一気に広がっていき、次から次へとお客さんが来てくれるようになった。

儲けはあまりないがお店がつぶれるほどではないと思っていた矢先、道理さんにチャンスが訪れる。横浜・関内の駅前の商業施設「セルテ」にできる「ラーメン横丁」に出店しないかという誘いだった。

嬉しい声掛けに、道理さんはお店の移転を決意する。こうして2018年6月、セルテに移転した。

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