今回、高瀬は大会前から「100mと200mの2冠」を宣言しており、余計なプレッシャーが戦いを難しくした面がある。
なぜ自分自身にプレッシャーをかけたのか
それでも高瀬は翌日の男子100mでキッチリと勝利した。優勝タイムは10秒28(-0.9)と期待外れに終わったものの、様々な状況を考えると仕方ない部分もあっただろう。すべてのレースが終わってから、高瀬は右腓腹筋に不安を抱えていたことを明かしたからだ。
「昨日まではトップスピードに上げることがすごく怖くて、自分のなかで制御していた部分がありました」と高瀬。トレーナーからは、「テープの保護」を勧められたが、「精神的に不安になってしまう」とカラダよりもメンタル面を優先させた。
「前日までは、『何々しなければならない』とか『切り替えなきゃいけない』と考えていたんですけど、メンタルトレーナーの方から、『自分はできている』と思った方が動いてくれるというアドバイスをいただき、考え方を改めました。今回は気持ちの切り替えがうまくいきましたね。今までやってきたことを整備して、自信を持って臨むことができました。
また、動きに関しても、前日まで悪かった部分をしっかりと修正できたと思います。決勝レースの前に脚の不安は吹っ切れていたので、あとは自分のレースをするだけでした。今回は勝って、当然だと思っていたので、優勝できてホッとしています」
悪いからといって、特別なことをするのではなく、頭のなかを“整理”することで、思考をクリアにしていく。迷いがなくなれば、シンプルに自分の動きができるようになる。特にスプリント種目では、「自分の走り」ができるかどうかが重要な要素になってくる。それなのに、なぜ高瀬は自分自身にプレッシャーをかけてきたのだろうか。
「今後は重圧があるなかで結果を残すことが求められると思ったからです。世界陸上もそうですけど、100mで10秒の壁を破るときには、もっと大きなプレッシャーがかかってくる。今回は、そのときを想定して臨みました。いい意味での失敗経験をしておくことで、今後の成功につなげられると思っています」
結果として裏目に出たものの、高瀬にとって今回の経験は100m9秒台、200m19秒台という大きな野望へのステップになるだろう。
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