藤光は5年ぶり2回目の優勝で、タイムは20秒32(+0.8)の自己ベスト。5年前の日本選手権でも20秒38(+1.2)の自己ベスト(当時)をマークしている。結果だけを考えると「同じ」ように見えるが、その“中身”はまったく違うという。
「振り返ると、5年前はなんとなく出てしまったものだと思います。調子が良かっただけで、カラダの準備はできていませんでした。でも、いまは違います。自分の走りをコントロールできるようになりましたから。昨年、一昨年も勝てる準備はできていたんですけど、春に上がり切れなかったぶん、日本選手権で(勝ちたい)という気持ちが強かったんです。そのため、決勝になると緊張やストレスで自分の走りができなかった。
今年は春に世界陸上の標準記録を突破していたので、気持ちにゆとりがありました。先のことを考えて、日本選手権を迎えることができたことが大きな違いだと思います」
狙うべきものを明確にしていた藤光
決勝で「タイム」と「順位」の両方を狙おうとすると、どうしても無理が生じてしまう。藤光は先に「タイム」の目標をクリアすることで、ストレスがあまりかからない状況を作ってきたのだ。そして、「走り」の部分で、確固たる「技術」を確立したことも大きい。日本選手権の決勝で、今季世界選手権の参加標準記録20秒50を突破したのは7回目だった。
「今季は4月のレース(織田記念)から、こういう走り方をすれば、これぐらいで走れるんだなというの“感覚”が分かってきて、その後、何レースも同じように走り、レース運びが確立できましたし、その精度も上がってきました。どんなかたちで前半を入って、トータル的にどうまとめればいいのか。出力の出し具合やカラダの使い方などが頭のなかで“整理”できているので、効率よく走っている感覚はあります。いまの状態なら、これぐらいのタイムで何度も走ることはたやすいことなのかな」
調子がいいから走れるのではなく、狙うべきタイムで走れるだけのカラダがあり、走る技術も確立できた。そして、頭の中も「整理」されていたため、藤光は勝つことができたのだ。29歳の藤光は5年前と比べて、タイムは0.06秒しか短縮していないが、アスリートとしてはかなり“成熟”したといえる。
一方の高瀬は“迷い”がパフォーマンスに影響していた。レース後には、「勝負になったときに自分の走りができなかった。僕はいいときと悪いときの差が激しい。藤光さんのような安定感がないので、そこで勝負は分かれたのかなと思います」と話していた。
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