TVマン見た「マジで秘境」チベット仏教の村(前編) 中国とインド国境「最果ての村」目指した結果…

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「君たち、どこの国の人?」

小さなバックパックを背負ったアラブ系の顔つきをした若い男が、突然声をかけてきた。頬から顎にかけて無精ヒゲを蓄えている。

「日本だけど、そちらは?」

「イスラエル」

旅先で見かけるイスラエル人の共通点

イスラエル人は高校卒業時の18歳から、男性は3年間、女性は2年間の兵役が義務づけられている。

インドには、兵役終わりのバケーションに来た若いイスラエリーの旅人がウジャウジャいて、彼が1人でここにいる理由も容易に理解できた。

「どこに泊まってたの?」

「どこにも」

「え? どういうこと?」

「野宿だよ。俺、1カ月くらいはこの辺りの山で寝泊まりしていた。まぁ、慣れてるから余裕だけどね」

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それから彼は5分以上ひとりで話を続けた。

簡単に説明すると、兵役で似たような訓練を受けてきたらしく、テントを張り、毎日トレッキングをしながらこの辺りの景色を楽しんでいたとのこと。

そして、たった今、山から降りてきたらしい。

実は、若いイスラエル人からこの手の話を5回近く聞いたことがある。共通しているのは若者特有のキラキラとした目と「俺、すげーだろ!」という自尊心が溢れた態度だ。

カナさんもそうだが、長期の旅人はあまり自分の旅の話をしない。

相手が質問してきたとき、必要最低限の情報は伝えるが、どの場所が最高だったとか、こんなに苦労したという類の話を避ける。

というのも、その手の話は、本人は面白くても、聞いている人には退屈だということがわかっているからだ。

俺が「すごいねー」と答えると、彼は無我夢中で話を続けた。だが、決して俺たち2人に目線を合わせることはなく、むしろ、会話をしながらも心を遠ざけているかのようにさえ感じた。

「山の中にひとりでいたから、人恋しかったんじゃないですかね」

バスの中でカナさんがぽつりと言った。彼女もまた、このような辺境の地に1人で訪れた旅人だ。孤独と向き合う人の気持ちをよく理解している。

「あんまり人が好きじゃないのかもね」

そう言うと、静かにうなずいた。

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