フィリップ・コトラーのマーケティング理論の中核をなすのは「STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)」である。大量生産・大量消費の時代は誰もが同じモノを欲しがり、むしろ人と同じモノを所有することに喜びをおぼえた。しかし、市場が成熟し、消費は高度化した。ことに、米国のブラックマンデー、日本のバブル経済崩壊や、近くはリーマンショックなどの経済環境悪化の中、消費者は賢くなり、自らの「買う理由=KBF(Key Buying Factor)」をしっかり見極めるようになった。つまり、コトラーのSTP理論は消費者のニーズを見極め、ターゲットを的確に絞り、そのターゲットのKBFに合致するようなポジショニングを明確に提示することで顧客化を図ることを旨としている。
ところが更に、今日の消費者像は価値観が多様化し、多面性があり、状況による変化も激しい。対象とする消費者像を細かく規定しようとすればするほど、狙える市場が小さくなってしまう矛盾に直面する。従い、従来のSTP理論ですらとらえきれないと「ポストモダンマーケティング」がアンチテーゼを行っている。
特に商品の価値を自ら評価し、新たな用い方などを創造する消費者を「アクティブコンシューマー」と定義している。サッポロ飲料のゲロルシュタイナーに対する販売戦略は、このあたりにヒントがありそうに筆者は思うがいかがだろうか。
「水は方円の器に随う」と中国の思想家・韓非子は記した。人は交友・環境しだいで善悪のいずれにもなるという喩えである。このドイツ生まれの天然炭酸水を消費者はどのように今後扱っていくのだろうか。ゲロルシュタイナーはドイツ西部のアイフェル火山麓で、雨水が長い年月をかけて磨いたものだという。今度は日本の消費者に商品として磨くことが委ねられたのだ。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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