水は方円の器に随うのか?~ゲロルシュタイナーの機会と課題~《それゆけ!カナモリさん》

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■しかし「のどごし」だけでは機会損失が発生する…

 古林氏の言う「のどごし」ニーズは確かに市場に存在し、ゲロルシュタイナーはそれに応えることができる。端的に考えれば、このニーズに向かって適切にマーケティング施策を打ち、一気に市場拡大、シェア獲得へ・・・となるのだろうが、「でも」と、同・ブランド戦略室の長谷川聡氏は、ことがそう単純ではないことを説明する。

ゲロルシュタイナーの特性は「のどごし」だけではなく、他にも多くの優れた特性があり、多様なニーズ開拓が可能、というのである。例えば、「硬度1310mg(1Lあたり) ph値6.5」という硬度は「スリミングウォーター」としての特性も持っており、健康志向の高い女性の支持を集めている。また、「カルシウム36mg、マグネシウム10mg(100mlあたり)」と理想的な配分、量で天然ミネラルを含有する特性は、妊娠中の女性に最適であり、爽快なのどごしと相まって、つわりが出る時期に飲みたい飲料の?1ともなっている。もちろん、主要販路であるコンビニエンスストアの主客層である男性の支持も高く、非アルコール飲用層からは「アルコール代わり」として、アルコール飲用層からは「お酒を飲んだ後に」というようなシーンで愛用されているという。  驚くべきは、リピート率の高さである。実に飲用者の81%が再購入をしているという。その理由は、「天然炭酸水だから」とミネラルの含有などが支持され、続いて「爽快な味わいが楽しめるから」と、強めの炭酸が支持されている。

これら特性、数値をサッポロ飲料、古林氏や長谷川氏の立場から眺めると、「『のどごし』ニーズに絞った訴求では、大きな機会損失を発生させてしまう」という悩みがリアルに感じられるのではないだろうか。

サッポロ飲料はこうした多様な消費者ニーズに対し、ゲロルシュタイナーの特性のどこかをフォーカスして訴求するのではなく、各種飲用シーンの提案を行う戦略をとっている。例えば、「目覚めの一杯に」「食事と共に」「お風呂上がりに」「スポーツに」「リフレッシュに」「就寝前に」などだ。ソーシャルメディアでの口コミ喚起など、コストをかけない施策を多く打つなど多々工夫をしているが、しかし結果として、マーケティング費用が散逸してしまう感は否めない。さて、この商品、皆さんだったら、どう売っていかれるだろうか?

 

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