「読者の7割ばあちゃん」福岡の新聞ヒットの裏側 75歳以上が働く「うきはの宝」のリアルに迫る

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唯一身につけていたバイク部品の販売をしようと起業し、デザインやマーケティングを学ぶと仕事が入ってくるように。

しかし、おばあちゃんたちの役に立ちたいという思いが募り、知人に勧められた社会起業家の育成スクール「ボーダレスアカデミー」を受講。地元でシニアの無料送迎サービスをしながら、1000人以上にヒアリングした結果、「年金にプラスして、ちょっと仕事ができるといい」という声を多数聞いた。

「過疎地のばあちゃんたちは、生きがいと収入を求めていたんです。当時、他の人に話しても、『おばあちゃんが働く必要があるの?』『ビジネスにはならないでしょ』と言われ続けました。でも、僕は本人たちの声を直接聞いていたから、絶対にできると信じていました」

ビジネスプランを磨き上げて、2019年10月「うきはの宝」を設立。目標は「500人のばあちゃんに仕事を生み出すこと」とした。「ばあちゃんたちの役に立ちたい一心で、会社を立ち上げました。ばあちゃんが働くことで生きがいと収入を得られるビジネスを確立して、世に問わなければと。高齢化や孤立の問題は、みんなで考えていかなければいけない問題だから」。

十数人のスタッフでスタートし、試行錯誤の連続だった。おばあちゃんが得意なことを仕事にしようと食堂や編み物をしたこともあるが、うまくいかずに中止。

でも、大熊さんはくじけない。「ビジネスとして成立しないものを追いかけても迷惑をかけるので、新たなことにチャレンジするときは期間を定めて、マネタイズできるか見極めています」。もちろん高齢のため施設に入ったり、ケガで外出できずに引退するおばあちゃんもいる。

読者の7割がおばあちゃんの「ばあちゃん新聞」

現在のヒット商品は、毎月発行の『ばあちゃん新聞』。当初は若者におばあちゃんの知恵を伝えるというコンセプトだったが、ふたをあければ読者の7割ほどはおばあちゃんだった。

そこで路線を変更し、おばあちゃんの生き方や人生相談、ヘアスタイル&ファッションなど、おばあちゃん向けのコーナーをそろえた。

うきはの宝 ばあちゃん新聞 福岡
撮影するとき、「笑ってください」とお願いする必要はない。いつも自然な笑顔なのだから(筆者撮影)

新聞を読んだ全国の読者から、よく電話がかかってくるという。「昨日は埼玉の88歳のおばあちゃんから電話がかかってきました。皆さん、だいたい新聞の感想から入って、自分のことをたくさんお話しされます。やはり寂しいんですよ……」。だからこそ、おばあちゃんが働けるビジネスモデルを全国に広げたい、と大熊さんは力を込める。

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