心臓外科医が説く「手術に向き合う」心の整え方 「ゾーンに入る」ことを期待してはいけない

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でもご家族は、心配で「手術の様子を見ていたい」と思われるのではないでしょうか。密室のなかで何が行われているかわからないのでは、不安が募るのも当然です。見てもらえばよいのではないか、と私は思いました。

「手術は医療側の秘事であって、他者に見せるものではない」

そのあり方には、ある種の権威主義的意識を感じます。医師が自信を持って適切な手術をしているのであれば、ご家族に見ていただいてもなんの不都合もないはずでしょう。

手術は医師と患者の「共同作業」

そこで私は、「ニューハート・ワタナベ国際病院」の手術室をガラス張りにしました。希望されるご家族には手術の様子を見守ってもらっています。スタッフがどのように関わり、手術がいかに進行しているかを実際に見て納得していただきたいからです。

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これは私がタイの病院を視察した際に初めてガラス張りのオペ室を見て、「導入しよう」と思ったことがきっかけでした。私が知る限り、日本にはガラス張りでご家族に見てもらえる手術室は当院にしかありません。今後、開かれた手術室が全国に広がることを望んでいます。

もう少し言えば、手術は医師が一方的に行うものでもありません。手術は、医師と患者さんの共同作業です。患者さんと医師の信頼関係が築けてこそ、その後のみなさんの人生を有意義にする手術が行えます。

絶対に病気を治す、手術を成功させる―。そのために私は、つねに最善を尽くします。と同時に、患者さんにも強い気持ちを持っていてほしいと思っています。

さらには手術室や医療の現場を開かれたものにすることで、お互いの不安をなくし、物事が前向きに進むことを願っています。都合の悪いことは隠したくなるのが人情ですが、じつは隠さないことこそ、心の乱れをなくす第一歩なのです。

渡邊 剛 心臓外科医、ニューハート・ワタナベ国際病院総長

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わたなべ ごう / Go Watanabe

ドイツのハノーファー医科大学にて、ドイツ心臓外科の父と呼ばれるHans G Borst教授に学び、2年半の臨床留学中2000件にわたる心臓手術を経験。チーフレジデントとして、32歳で日本人最年少の心臓移植執刀医として活躍。41歳で金沢大学医学部の心肺・総合外科の教授となり、心臓アウェイク手術や、外科手術用ロボット「ダヴィンチ」を使った心臓手術など、日本で初めての手術を次々に成し遂げる。手術の成功率は99.6%。2014年5月、ニューハート・ワタナベ国際病院を開設し、総長として就任。「心臓外科のブラック・ジャック」と呼ばれる。

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