日本政府が防衛費を上げる前にやるべき3つのこと 陸自予算の削減、新戦闘機開発の中止、耐震改修…

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国にその余裕はない。日本は30年に及ぶ経済不振の中にある。しかも、この5年は消費増税やコロナ禍、円安の悪影響もある。国民生活も一段と困窮化している。

この状況で計43兆円の支出は厳しい。国民の税負担はすでに限界に近い。そのため防衛増税もままならない。実際に防衛費増額分の財源確保もできかねている。

さらにいえば防衛費をGDP(国民総生産)の2%にまで引き上げることは非現実的ですらある。2%とは、いわゆる「防衛3文書」(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)で目標として掲げた数字だが、衰退した日本経済にとっては重荷になりかねない。

むしろ今は、国民の負担を休ませることを優先する時期だ。社会保障の充実や中低所得層の底上げを図らなければならない。そうしなければ日本は自滅の道からはい出せなくなってしまう。

防衛費を増額して中国向け軍事力の改善を図りたいが、経済事情からその実現は困難なのだ。

まずは陸上戦力の見直しを

この問題を解決する方法は存在する。防衛費増額の継続のは難しいが、軍事劣勢の緩和と経済改善の両立はできる。

それは防衛支出を見直すことだ。防衛支出のうち中国対策とならない事業を見直す。その分の防衛費を削減する。あるいは軍事劣勢の改善に充てることだ。

まず1つ目は、陸自支出の縮小である。日中の軍事対立は海空戦力による対立だ。陸上戦力には中国対策の効果はない。そこへの投資を控えることで防衛支出の縮小と対中劣勢の改善の両立は可能となる。

陸自支出の縮小については、中国対策にはならない陸上戦力への投資を控える。それにより防衛支出の縮小と対中劣勢の改善の両立は可能となる。実際に、陸上戦力は存在感を示せていない。

両国は地続きではない。陸軍にあたる人民解放軍100万人が中国本土に存在しても、日本に14万人の陸自が存在していても、互いにとって脅威とはならない。つまり、陸自は中国対策とはならない。

平時の対立なら、なおさらである。陸上戦力は、いま競っている軍事力積み上げの対象戦力ではない。増強しても競争は有利とならないし、縮小しても不利ともならない。

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