8年で11軒閉店「ラーメン屋の墓場」で繁盛した必然 「日本一アンチが多い」店主は何を考えてきたか

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「他のラーメン界のキャラクターに勝つにはどうしたらいいか考えました。小さいサングラスで目元のインパクトを出すのと同時に、1年間は絶対に動画で“しゃべらない”と決めていました。これまで文字や言葉で勝負をする店主はいましたが、動きや動画を上手く使っている人はいませんでした。

日本語を話してしまうと海外の人たちはついてこないと思ったので、本当のチャンスが来るまでは声を発さないと決めていたんです」(りゅう社長)

パントマイマーのような感覚で、1年間は動きだけで表現してきた。これが若い層に受けて、他のラーメン店にない客層を獲得していく。

動画の製作よりも店づくりや味づくりに集中したい

油そば 鈴の木
(筆者撮影)

6月に大きくバズったことで、1日の客数も200~300人から多い日で400人を記録する日も出てきた。動画を見た小中学生も多く集まり、最近では修学旅行生が団体で訪れることも多いという。

実はりゅう社長はYouTubeチャンネルを持っていない。YouTubeの動画を自分で編集してアップすることもない。すべて他のインフルエンサーによる撮影や取材でバズリ続けている。それはなぜか?

「飲食経営者としては動画の製作よりも店づくりや味づくりに集中すべきです。自分は凝り性で、一度始めたら動画に時間を費やしてしまいそうなので、であれば、再生数を伸ばせる人に撮りに来てもらおうと思いました。インフルエンサーに撮りに行きたいと思わせられるキャラクターと企画を磨き続ければそれは可能なんです」(りゅう社長)

今年2月の2周年の時には「値上げ」を行った。

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「2周年を記念して値上げします」という動画は、「値下げ」と見せかけて「値上げ」というその話題性で、翌日には長い行列ができた。りゅう社長は「大変申し訳ありませんが値上げさせていただきます」とは言わないのである。値上げしたにもかかわらず、「動画が面白かったので来ました」とお客を集められるお店はなかなかないのではないだろうか。

なんと昨年12月には全国各地の「ドン・キホーテ」でりゅう社長コラボ商品の「ブラボーサングラス」が発売。この6月には「りゅう社長スクイーズ」の発売も決定している。やはりりゅう社長は単なるラーメン店主ではなく「キャラクター」なのである。

「今は『日本一アンチのいるラーメン店』として認知されていますが、このキャッチフレーズもいずれはなくしていくつもりです。バズにも潮目があるので、スベる前にどんどん新しいものに書き換えていくことが大事だと思っています」(りゅう社長)

オープン当時エリアで最下位だった客数も今やトップレベルに。快進撃を続けるりゅう社長に今後も期待したい。

りゅう社長の写真
(筆者撮影)
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井手隊長 ラーメンライター/ミュージシャン

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いでたいちょう / Idetaicho

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」「AERAdot.」等の連載のほか、コンテスト審査員、番組・イベントMCなどで活躍中。近年はラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」、「個人店の事業承継」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。テレビ・ネット番組への出演は「羽鳥慎一モーニングショー」「ABEMA的ニュースショー」「熱狂マニアさん!」「5時に夢中!」など多数。その他、ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。著書に「できる人だけが知っている 『ここだけの話』を聞く技術」(秀和システム)がある。

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