映画「あぶない刑事」"前期高齢者"が大活躍の背景 ドラマや映画で中年・シニアの主人公が増えている

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5月3日、『帰ってきた あぶない刑事』の完成披露イベントとして「ザよこはまパレード(国際仮装行列)」が開催された際、こんなことがあった。

ハイヒールを履いて足が痛くなってしまった浅野温子を、舘ひろしがひょいとお姫様抱っこしたのである。私も動画を見たが、あまりのさりげなさに唸ってしまった。「気障(キザ)」を刷り込まれた昭和の大スター特有のテクニック。シニアだからこそ許される“粋”があった。

浅野温子はインタビューで、「あぶ刑事」が愛され続ける理由を、「やっぱりたっちゃん(舘ひろし)と恭平ちゃん(柴田恭兵)がいつまでもカッコいいところを見たいんですよね。ストーリーとか犯人探しを超越して、見どころはあのふたり」(『素敵なあの人』7月号、宝島社)と語っている。

まさに「カッコよく年を取っている人が、イキイキと活躍する姿を見ることができる」というのは、それだけで映画やドラマを成り立たせるほど眩しく、重要な要素なのだと思う。

「何でもリセット」の令和ドラマ

現在のコンプライアンス社会のもとをたどれば、ネットの進化によるコミュニケーションツールの影響は避けて通れない。ただでさえ大人になると社会的なルールに縛られ萎縮するのに、SNSという“検閲官”の登場で、不特定多数の人につねにジャッジされているような状態となった。

スペシャルドラマ『GTO』では、何か騒ぎが起これば、目の前にいるにもかかわらずスマホを通して観察し、撮影した動画を拡散。逆に自分の秘密の動画やコメントが流出すると「人生詰んだ」と絶望する若者たちが描かれ、それをガラケーユーザーの鬼塚が解決する、というのも印象的だった。

GTO
伝説の教師・鬼塚英吉の26年後を描いたスペシャルドラマ『GTOリバイバル』。はちゃめちゃな“おじさん”は令和の若者にどう映ったか(画像:カンテレ『GTOリバイバル』公式サイトより)

何かをする前に、見知らぬ誰かの批判が頭に浮かぶ。そして、行動の前に炎上を想像して震える。問題が起こったとき、やり直しを図ろうとも、見知らぬ誰かの中傷がそれを邪魔する。

そのためか、令和のドラマやマンガでは転生系、タイムスリップ系が多い。ちなみに今期、2024年春クールドラマでは「記憶喪失ドラマ」が4つ登場。一度なかったことにする強制リセット、リスタートに、希望を持つのかもしれない。これはもう、SNSという逃れられない検閲の壁が日常にあるせいだろう。

ちなみに、バラエティー番組『しゃべくり007』に舘ひろしと柴田恭兵が登場した際、舘は、スマホは持っているがSNSはやっておらず、柴田に至っては、携帯すら持っていない、という話で盛り上がっていた。

若年層ほどにはSNSに縛られず、「炎上」を気にしないシニア層の、向こう見ずな行動力とのびやかさは、一歩間違えれば大きなトラブルのもととなるのも確か。しかし、それゆえのパワーを持っており、いま強く求められているのも確かなのである。

明るくポジティブな行動力は、素晴らしい人生の再生エネルギー。『帰ってきた あぶない刑事』の予告の最後には、まさに、それを示す名キャッチコピーが映し出される。

無茶しないと滅びるぜ――

田中 稲 ライター

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たなか いね / Ine Tanaka

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人ではアイドル、昭和歌謡・ドラマ、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)、『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。

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