映画「あぶない刑事」"前期高齢者"が大活躍の背景 ドラマや映画で中年・シニアの主人公が増えている

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ドラマ放送開始は1986年。「キザな台詞、イカしたジョーク、スタイリッシュなセンス」――。もはや刑事ドラマとは思えない言葉が並んだこのキャッチフレーズの通り、『あぶない刑事』はバブルの空気を反映した、オシャレで粋がテーマという前代未聞のトレンディ刑事ドラマとして大人気を博したのである。

当時ユージ役の柴田恭兵35歳、タカ役の舘ひろしは36歳であった。『太陽にほえろ!』で石原裕次郎がボスをしていたのが38歳だったことを考えると、若手どころか、かなりの中堅。タカとユージは初回からすでに血の気が多い若手ではなく、力の抜き加減を知っている、憧れの大人だったのだ。

回を追うごとにチャラく派手になっていくタカとユージ、そして浅野温子演じる薫。ブランドのスーツを着こなし、犯人を追い、「OKベイビー?」「夜遊びはおねしょのもとだぜ、坊やたち」など、セリフもどんどんキザになっていった。

さらに、聞くだけでテンションが上がるオープニングは、タカ役の舘ひろしが作曲しているというのも驚く。

挿入歌のエキサイティングな『RUNNING SHOT』も、疾走感の中にどこか昭和歌謡みがある絶妙な名曲。「行くぜ!」と視聴者を煽ってくる。

そしてドラマが終われば、舘ひろしによるダンディの極みのようなエンディング『冷たい太陽』が「アイラヴュウ……」と心を撫でる。まさに隙の無いダンディ&セクシー包囲網。

当時人気を博していたアメリカのドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』を意識し、それまでの刑事ドラマに漂っていた暗さ、悲壮感は排除することを狙ったというが、見事狙い通り。平均視聴率は20%を超え、舞台となる横浜にまで特別な輝きを持たせたのである。

1986年から2024年、つまり彼らは30代から70代にかけて、憧れで居続けているのだ。足腰は丈夫で姿勢もシュッとしたまま、白髪やシワをアクセサリーに、ダンディかつセクシーに年を取る。書くのは簡単だが、実現するのは気が遠くなるほど大変だろう。

しかも2人とも、同じくらいダンディ&セクシー。2人が並んだシーンのバランスの良さを見ると、このバディは、奇跡と言っていいのかもしれないと思う。

“不適切”なおじさんたちが大活躍

『帰ってきた あぶない刑事』のすごさは、シニアのタカとユージが司令塔に回らず、“現役”であるところだ。ヒーローは、若者ではなく“おじさん”。昨年あたりから、エンタメ作品でこのパターンが増えている。

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