映画「あぶない刑事」"前期高齢者"が大活躍の背景 ドラマや映画で中年・シニアの主人公が増えている

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2人が登場するだけで、大きなスクリーンにぶわりと広がる色気と華。「老いるってこういうことか」とぼやきながらも、敵に向かっていくのだ。

地面に叩きつけられ、投げ飛ばされ、激しいアクションシーンにはハラハラしっぱなしである。しかし、若者に負けじと俊敏に動き、守るべき人を守る彼ら。その“ショータイム”は素晴らしい。

タカの天敵である銀星会との関係も継続。今回の敵は、彼らが撃ち殺した銀星会会長・前尾源次郎(柄本明)の息子、海堂巧。これを演じる早乙女太一の、まさにトカゲのような不気味なクレイジーさが見事だった。

舘ひろしと対峙するシーンは、「もしかして“ポスト舘ひろし”はこの人かも」と思うような底光りと迫力があった。 これまでの「あぶ刑事」シリーズの名シーン映像が、ストーリーとリンクする形で登場し、2人の若かりし姿と今が絶妙に交差する。

スマートフォンやTikTokなど、ジェネレーションギャップを感じるアイテムも登場するが、さほどそこに重きを置いていない。令和という時代に合わせアップロードするというより、年を取ったことを認めつつ、若者と比べず、自分たちが持つ「衰えない才能、個性」を前に出し、タカとユージはお茶目に走り回っていた。

非常にニュートラルな目線で、2人がいい年の取り方をしていることに感動できたのである。

バイクを乗り回す“前期高齢者”

しかし改めて驚く。舘ひろしは1950年3月生まれの74歳、柴田恭兵が1951年8月生まれの72歳。どちらも芸能界デビューは1975年。来年で芸能活動50周年である。

いわゆる“前期高齢者”。そんな彼らがバイクを乗り回し、子ども世代どころか、孫世代とともに走り回るのだ。どんなポーズも粋で色気があり、「こんなふうになれるなら」と70歳になることに希望まで感じてしまう。

昭和・平成・令和とコンプリートし、公開前から話題沸騰。『あぶない刑事』はなぜここまで熱く注目を浴び続けるのだろう。

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