また、大震災の影響は、まだ現れていないということができる。それが現れるのは、12年3月卒業からということになろう。実際、6月下旬時点での内定率は49・2%と、前年より6・6ポイント低下した。
年齢階級別の完全失業率を見ても、若年層ほど高い。15~24歳の5月での値は、男女計で8・1%、男子では9・2%となっている。15~24歳の男子は、経済危機後は10%前後であり、目立って回復していない。10年3月には13・6%、11年3月には11・2%まで高まった。
この年齢層はすでに「失業率1割時代」になっているのである。前半部分で、日本全体で、潜在的には失業率が1割程度だと述べたが、若年層では、それが現実の数字となっているのである。
雇用政策は、いったん雇用された人、あるいは現在雇用されている人を対象とするものが多い。実際、雇用調整助成金は、すでに就職している人を対象にするものだ。だから就職していない人は、この制度の恩恵にあずかることができない。
内定率の低下に対して議論されているのは、就職活動や選考時期を遅らせるなど、おざなりである。こうしたことで、若年層の就職率が上昇することなどありえない。日本の雇用全体を増加させることを、真剣に考える必要がある。
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)
(週刊東洋経済2011年8月13・20日合併特大号)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら