厚労省によると、99年度の生活保護世帯のうち、20~50代の稼働年齢層を中心にする世帯は約5万世帯だった。しかし、11年3月時点では約24万世帯と、5倍近くに増加した。生活保護受給者の中には高齢者も60万人程度含まれてはいるが、働くことのできる人も多く含まれると考えられる。生活保護は、就労可能性のある人は本来対象にしていない。しかし、就職しようとしてもできない人は、支給の対象とせざるをえない。
いったん生活保護の対象となると、貧困の悪循環に陥る可能性が高い。長い間給付を受けるうちに就労意欲を喪失する人もいる。また、東京都福祉協議会の調査によると、10年3月に都内の中学校を卒業した生活保護世帯の生徒のうち全日制高校に進学した者は68・6%だった(朝日新聞、7月28日付)。これは、文部科学省の学校基本調査による同時期での都内の全日制高校進学率91・6%に比べて著しく低い。高校に進学できなかった子どもたちは、将来の就職活動で厳しい体験をせざるをえないだろう。
若年者の就職状況は非常に厳しい
以上で見たのは、主として一度は就職した人たちの失業状況である。
しかし、これから労働市場に参入しようとする世代では、状況はさらに厳しい。これは新卒者の就職難を見てもわかる。
厚労省の「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」によると、11年3月大学卒業予定者の就職内定率は、91・1%だった。つまり、卒業者の約1割は職が得られない状態になっている。
この値は、08年3月卒業者では、96・9%だった。それ以前も93%を超える水準だった。ところが、経済危機の影響が現れた10年3月卒業者で91・8%に下落し、悪化が始まったのである。
卒業前年の10月1日時点での内定率を見ても、経済危機の影響が見られる。11年3月の大学卒業予定者についての値は57・6%だった。09年3月卒業予定者についての値は69・9%だったので、大幅に低下したことがわかる。
日本の大学の就職慣行では、卒業前年の10月1日に多くの企業で内定式が行われる。したがって、この時点の内定率は、「就職したい企業」に就職できた率を示すと解釈できる。それ以降の内定は、希望水準をかなり下げている。だから今の日本では、「就職したい企業に就職できる」大学生は半分程度でしかないということになる。