これまで次のことを述べてきた。
日本における製造業の雇用は、1990年代初めにピークに達した後、今日に至るまでほぼ一貫して減少してきた。2003年前後から数年の外需拡大は鉱工業生産を増大させたが、雇用には一時的な効果しか及ぼさなかった。リーマンショックによる経済危機によって生産は大きく落ち込んだが、雇用の悪化は雇用調整助成金などによって表面的には抑えられた。また、生活保護の受給者も増加した。
他方で、製造業の海外移転は、東日本大震災前から加速している。これは、円高が主たる原因だ。大震災後、電力事情を始めとする生産条件の悪化によって、製造業の海外移転がさらに加速され、製造業の雇用がさらに減少する可能性が高い。若年層ではすでに現実の失業率が10%を超える水準になっている。
こうした事態に対して一般に主張されるのは、「製造業が海外移転するのは望ましくないから、食い止めるべきだ」という意見である。
しかし、製造業の移転は経済条件の変化に対応する企業の合理的行動の結果なのだから、それを食い止めることはできない。それに、すでに移転はかなりの程度進行しており、逆戻りさせることはできない。製造業の縮小による雇用減は、20年以上前から進行している現象なのだ。
だから、いま必要なのは雇用を創出する新しい産業を国内に興すことである。これこそが大震災後の日本経済の最大の課題なのである。
では、それをいかにして実現できるか?「新しい産業」とは、どのようなものなのだろうか?
この問題を考える際に重要な参考になるのは、アメリカの状況だ。なぜなら、アメリカも80年代において同じ事態に直面したからだ。