格付け会社によるアメリカ国債への格付け引き下げが、世界的な金融混乱を引き起した。
ただし、影響を受けたのは主として株価と原油価格である。その反面で、アメリカ国債が暴落することはなかった。本当にアメリカの国債が危ないのなら、投資資金が国債から逃避し金利が上昇するはずだ。しかし、実際には金利は低下した(10年国債利回りは、7月下旬には3%程度だったが、8月になってからは2%台だ)。
ヨーロッパでも国債が問題を引き起こしている。アメリカでもヨーロッパでも、経済危機に対して政府が大規模に介入したため、国の財政が悪化したのだ。しかし、財政危機の深刻さは国によって大きな差がある。この点でアメリカとギリシャは明らかに異なる。ここ数年の世界経済の動揺は「ソブリン危機」と呼ばれるが、アメリカが国家破綻の事態に陥っているとは到底思えない。
もちろんアメリカ経済に問題が山積みなのは事実である。失業率は高止まりしたままだし、住宅価格も下げ止まらない。しかし、アメリカのすべてが弱くなっているわけではない。前回述べたように、アメリカには強い産業と企業が存在するのだ。
経済危機後、「アメリカ経済の没落」ということが盛んに言われた。しかし、グラフで見るように、現在のアメリカの株価水準は、リーマンショック前(2008年9月)とほぼ同じだ。金融危機以前(07年7月ごろ)と比べても、8割程度にまで回復している。